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____だからこそ。
時が経てば人は変わるものだ。
「…今すぐここから帰って」
「でも…」
「いいから帰れって言ってるの!!」
いつもの口調に戻すことは出来なかった。
胸の内から、感情が溢れて止まらない。
『傷つけたくない』
『離れたくない』
『荻原に会いたい』
『もう一度、黒子とバスケがしたい』
『もう一度、黒子のバスケを近くで感じたい』
もっと、もっと_____"幸せ"を感じたい。
だからこそ、言わなければいけない時はある、
捨てなければいけない時がある。
「…わからないようなら教えてあげる」
この部屋は、休憩室という名の医務室だ。
____つまりは簡単な作業。
私は、すぐ近くの棚にあったハサミを右手に持ち、深呼吸をしながら大きく振りかぶる。
「……っ…」
ザクッと、左手首に鋭い痛みを覚えた。
自然と一瞬だけ顔をしかめてしまうが、黒子を突き放す為に、その痛みをも我慢する。
「ほら、何も出ない。
……"血"なんて、一滴も出ないんだ。
やっぱり私は、人間とは…」
「もうやめて下さい!!」
そこまで言ったところで、固まっていた黒子がこちらに向かってくる。
そして、私の手からハサミを取り上げた後、昔会っていた時は見たことの無かった、やるせないような表情を浮かべる。
「…僕の血で、いいですか…?」
「ぇ……?」
ハサミを開き、シュッと自分の指に刃先を滑らせる黒子。その切れた筋からは、赤い液体がゆっくりと溢れ出していく。
「なに、やって……んの…?
やめてよ!同情なんかもう要らない!!」
「……同情なんかじゃありません。
貴方の為なら血を分けることくらい、簡単なことですから」
この目は本気。
今までずっと忘れていた、優しい笑みを私に向ける黒子。
どこか安心感を覚える表情なのに、どこまで真剣なのかはひしひしと伝わってくる。
___あぁ、黒子テツヤという人間は. . .
「…本当、変なやつ」
「どういう意味ですか」
「まんまの意味だ……バカ。」
思い出してみれば、初めての事かも知れない。
人から血を"貰う"という行為は。
「……ん。」
______黒子の指から滴る赤い液体。
舌先から伝わる甘い味、数秒前に出たばかりだから後味もサッパリとしている。
あぁ、本当に_____
「…忘れろって言われても忘れてあげないから」
思わず漏れた一言に、黒子はクスリと笑った。
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黒ウサギ - ハーイ(*´▽`*)楽しみにしていますねっ☆ (2014年11月1日 22時) (レス) id: 630c907ecf (このIDを非表示/違反報告)
みなみな(プロフ) - 黒ウサギさん» ありがとうございます(´∀`*)是非是非、これからもよろしくお願いします(`・ω・´)キリッ (2014年11月1日 1時) (レス) id: 0af48c629f (このIDを非表示/違反報告)
黒ウサギ - お話いつも読ませて貰ってます(^○^)続きが気になって仕方がありません;^)更新楽しみにしています(≧∇≦*) (2014年11月1日 0時) (レス) id: 630c907ecf (このIDを非表示/違反報告)
みなみな(プロフ) - 心縷々さん» えーと…私は心縷々さんの作品を読んだことが無いのでアドバイスというより、自分が気をつけていることを言いますけど…一先ず、私は裏設定を大量に作っていたりしますね。物語の中では語られることの無い物語…そういうものが人を惹きつける魅力だと思うのです (2014年9月2日 17時) (レス) id: 0af48c629f (このIDを非表示/違反報告)
心縷々(プロフ) - あの、お願いがあります。私はホラーを書いているのですが、この小説は私の書けないなんか難しい展開が上手いと思いまして…。厚かましいのですが、アドバイスとかもらえませんか?お願いします!作者名はこのままなので…。 (2014年9月2日 16時) (レス) id: 2c93f684a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みなみな | 作成日時:2014年8月31日 18時