鬼灯の冷徹短編集＊大人味 (ページ2)

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ビターな恋を貴女と#2 ページ2

角度を変えて、何度となく落とすキス

『…っ…ん…』

「なかなかいい声じゃないですか」

『あ…い…じわる…をしないで下さ…い…』

「…ずっと私とこうしたかったんでしょう？」

『っ…ん…ひど…い…』

甘い刺激に身体を震わせて、半開きで求めているような唇に無理やり舌を捩じ込む

『…っ』

「…は…あ」

『ん…っ加々…知さん…』

「…っ」

薄暗いオフィスにキスをする音と息づかいだけが響いて
油断をすると私も意識を持っていかれそうになる

「A…さん…」

自分も僅かに限界を感じて

暫くして、すっかり力の抜けたAさんを解放してみれば、赤く上気した顔にうっすら涙を浮かべていた

『…酷いです…加々知さん…確かに私‥加々知さんの事、好きでしたけど…急にこんな…こと』

「……」

明日で契約は切れて、私の出張も終わりをむかえる
耳を見られた以上関係を続けるのも危険過ぎる

全ては私の失態

「…私は鬼だと言ったでしょう」

『加々知さん…そんな…でも、もしそうだとしても私は加々知さんが…』

「貴女は例え私が鬼でもいいと？一時の感情で物事を考えない事ですね…そんな不確かな想いは迷惑です」

『私が嫌いですか…？』

「……別に」

『…じゃあ今のは何だったんですか…』

「…単なる気まぐれです」

嫌ってくれてそれでいい

どうせ報われないならば

最低だと思ってくれた方が、きっと私もAさんも救われる

「さよなら」

私は静かに泣き始めたAさんを置いて、何故か痛む胸を押さえながらオフィスを後にした

…明日は地獄に帰る日だ

end