グレイの想い ページ10
ガルナ島 村の外――
深い森の中を走りながら、
グレイは10年前に起こった出来事を
ルーシィ達に話した。
「そんな事が…」
「だからAは
デリオラを見た途端、
座り込んで震えてたんだね…」
「Aから昔の話を
詳しく聞いた事はなかったが、
まさか記憶を失っていたとはな…」
「それもビックリよね。
名前以外の事を、
覚えていなかったなんて…」
「あい…」
ルーシィ達はそれ以上は何も言えず、
沈黙の状態で森の中を走り続けていた。
しかし、
その沈黙を破ったのは
グレイだった。
「ルーシィ…前に言ってただろ。
言いたい事があるなら、
ちゃんとAに伝えろって」
「うん…」
「本当は別の意味で…
ずっと…言えなかったんだ…」
「別の意味…?」
「ウルを死なせたオレを…
Aは…好きになってくれるのか…
ずっと不安で…言えなかったんだ…」
グレイはそう言って顔を曇らせていた。
しかし、
そんなグレイに構う事なく
エルザが口を開いた。
「お前の目は…節穴か?」
「なっ…!?」
「ちょっと!エルザ!!」
「お前は今まで、
Aの何処を見てきたんだ。
Aに一度でも"憎い"と、
言われた事があるか?…違うだろ。
お前より付き合いが短い私でも分かる。
Aはお前といるのが好きだから
一緒に仕事へ出かけたり、
チームを組んでいるんだろう?」
「!!」
「あたしはギルドに入ったばっかだけど…
Aはグレイの事を、
凄く信頼してると思うの。
それに、
この前Aがこっそり
あたしに打ち明けてくれたんだけど…
グレイと一緒にいるのが心地良くて、
毎日が楽しいって言ってたわよ!!」
「あい!」
エルザ達がそう言うと、
泣きそうな、嬉しそうな表情をした
グレイの顔が一瞬だけ見えた。
「(本当に…Aにベタ惚れね…)」
「そうか…ありがとな」
「気が晴れたところで…Aを探しに行くぞ」
「Aは確か…
リオンのトコにいるんだよね?」
「あぁ」
「Aは強いから大丈夫だと思うけど、
もしも、殺されちゃってたら…」
「リオンは絶対に、
Aを傷付ける事はしねぇよ。
アイツもオレと同じで…Aに惚れてんだ」
「あら、兄弟子がライバルなんて…手強いわね」
「Aを想う気持ちは誰にも負けねぇよ!!」
そう言ったグレイは
先程までの暗い表情ではなく、
自信に満ちた表情で笑っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき | 作成日時：2023年3月24日 11時
