妖精の尻尾の姫_4章【FAIRYTAIL】 (ページ21)

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隣にいてページ21

『グレイ』

「A…」

パシンッ――
Aはグレイの頬を叩いた。

「A!いきなり何す…」

何かを言いかけたグレイは黙った。
Aが震える手で、
自身を抱き締めていたからだった。

『まったく…
　そんなになるまで戦って…
　心配したんだよ』

「わ、悪ィ…」

『でも…』

「ん?」

『グレイが生きてて…本当に…良かった…』

「A…いってぇ!!」

『グレイ!傷が…!!』

痛そうに腹部を押さえるグレイを見ると、
Aは鞄から治療セットを取り出して
傷の手当てをし始めた。

『こんなに傷作って…
　薬がなくなりそうだから、
　帰ったらポーリュシカさんに
　また薬を貰ってこないと…』

「なぁ、A。
　オレの事…恨んでねぇのか…?」

『えっ?』

そう言われたAは、
手当てをする手を止めた。

『急にどうしたの?』

「オレはウルを…ウルを殺した…」

『グレイのせいじゃないよ』

「リオンと一緒にいた方が…
　Aはずっと笑って――『それは違うよ』」

Aは真剣な表情をして、
グレイを見据えていた。

『本当は昔みたいに、
　3人で一緒にいられたら良いけど…
　私はこれから先もグレイの隣にいるよ』

「これまでオレの隣にいたのは、
　ウルとの約束を…破らないため…なのか…?」

グレイは氷となる直前に言った
ウルの言葉を思い出していた。

"どんな時もお互いの側にいて、
　お互いを支え合ってくれ"

『ウルとの約束の事ももちろんあるけど…
　グレイの隣にいたいって気持ちは、
　紛れもない私自身の意志だよ』

「A…」

『私はこれから先も、
　ずっとグレイの隣にいるよ。
　だから、グレイも…私の隣にいて』

オオオオオ――
するとその時、
揺れとともに大きな雄叫びが響き渡った。

「こ…この声…忘れようがねぇ…」

グレイがそう呟くと、
Aは無言のままグレイの肩に顔を埋めた。
身体を震わせているAは怯えていた。

『(や…やっぱり怖い…
　でも、私達が…何とかしないと…)』

グレイは安心させるために、
Aを優しく抱き締めた。

「大丈夫だ。オレが何とかしてやる」

『グレイだけでやらせない…
　私も昔より強くなったんだから…

　これは…私達3人が、
　未来へ歩き出す最初の試練…
　グレイと一緒なら…私は怖くないよ』

そう言ってAは無理して笑うが、
グレイはその顔を直視する事が出来なかった。

「行くぞ」

『うん』

Aとグレイは急いで遺跡の地下へ向かった。