1308話 ページ8
✩
旅行の帰りって、無性に寂しい気持ちになるよね
もう終わりか〜…
みたいな
｢おまえ、リッツのこと言えないぐらいによく寝る子だったんだな〜｣
｢へ？あはは…疲れやすい体質だから、ですかね？｣
｢作曲家としてはHSPがちょっと羨ましかったりするけど、おれは天才だから今のままで十分だ！｣
｢…？｣
また私の知らない単語が出てきた
月永さんって意外と知的っていうか、マイナーな語彙を急に披露する時があるから驚くよね
｢なぁ子ヒツジちゃん｣
｢なんですか？｣
｢…今日は楽しかったか？｣
｢？はい！すっごく楽しかったです！｣
｢わはは！そっかそっか…♪｣
何かをはぐらかしたのは分かったけど、なんて言おうとしたんだろう
聞かない方がいいのかな
数分すると、もう空港に着いてしまった
｢ここまで案内してくれてありがとうございました。また会いましょうね！｣
｢あぁ。未熟な王さまも含めて、あいつらをよろしくな…♪｣
｢はい！｣
私が車から下りて、キャリーケースを引いて中に入ろうとすると後ろから声が聞こえた
んん？
｢わはは…ごめんな、呼び止めて｣
｢どうしたんですか？｣
｢言うか迷ったけど、一応伝えておこうと思ってな｣
｢…？｣
そう言うと、月永さんはこんなことを言った
｢ライブをしてた時、遠くで声が聞こえてきたんだ。そいつは｢あいつだ｣って言いながら、大喜びしてた｣
｢あいつ？｣
｢おれもよく分からないけど、とにかく気をつけろよ｣
｢わ、分かりました…｣
｢そいつの声を聞いた瞬間、身体中がぞわぞわしたんだ。ただの気のせいかもしれないけどな｣
一応、注意した方が良さそうだな
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作者名：赤月 音 | 作成日時：2021年4月5日 0時
