【文スト】早い者勝ち【太宰治】

20回目 ページ24

A「……終わった」



もう誰も、居ない。

部屋を出て、誰も居ない薄暗い廊下に出る。


月は、雲で隠れている。



なんだか、デジャヴだ。

前にもこんな事があった。




また、あの女がいたのだから。


伊上「うふふ、こんな時間までお疲れ様でぇす」

A「…ええ。…お疲れ様……」


嫌だ。

心の中で警報が鳴っている。

この女は、嫌だと。


A「……それじゃあ」


そそくさと、立ち去ろうとする。

最後に会ったのがこの女なんて、最悪だ。


伊上「私ぃ、ずっと嫌だったんですよぉ」


ぴくり、と体が止まる。


伊上「皆んなにちやほやされてて」


だから、と彼女は続けた。


伊上「私がぁ、その居場所を奪ってあげようと思ってぇ」


ふふ、と高い声をあげ笑った。


A「いいよ」

伊上「……はぁ？」


思わず聞き返してきた。


A「"いいよ"って言ったの」


もう、貴方が奪わなくても私の居場所はなくなるのだから。


伊上は驚いたような顔をした後、睨んで、


伊上「あ、ああそうですかぁ。じゃあやってあげましょう」



そう言い残すと、去ってしまった。

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