一節 四部 ページ4
ぴちょん、ぴちょん……と水の音が静かに響き渡る。その中を二人はランタンの灯りを頼りにずっと歩き続ける。どこまで進むんだとナオは文句を言うが、それを楽しませるようにコツコツと靴の音は水の音と共に響き渡った。
「深いからな」
ただ一言、黒龍はナオの文句に返しつつも違和感ばかりの今の状況に警戒心は増していく。その違和感をナオはやっと口にした。
「……ってか、
そう、二人は洞穴に入ってからまだ一度も生き物すら見ていない。
東区域は冒険者の為のエリアで、ダンジョンが多くあり、化物討伐でレベル上げをしていく。この洞穴もそのダンジョンのうちの一つの筈なのだが、入ってから全く化物と出会っていない、つまりダンジョンとして機能していない。例え敵を全滅させたとしても敵は自然と再び
黒龍も気付きつつも特に気にすることなく、否、いつも通りに周囲に細心の注意を払ってナオの一歩後ろを歩く。
「…そのうち来るだろ」
「うわ適当」
「主よりマシ」
「主を貶すとは…!」
そんな茶番を繰り返していると、何か殺気を感じて二人は足を止めると静かに息を吐いた。ナオが期待していたであろうものが後ろにある。そのナオのワクワクとした感情を察しつつ黒龍は呟いた。
「…無駄話してる場合じゃないな」
「やっとお出ましか」
振り向いた二人の前にはゴブリンが多数。
「……黒龍だったら一発だよね」
「それは俺が龍だったらの話だろうが、ここじゃ流石にスペースがたんねぇ」
わかってはいたが、態々取り出さなければならない面倒臭さに文句垂れ、嫌々ながらもナオは両手を広げ唱える。
「【我は汝を欲す、汝姿を現せ。黒刀・
黒光りする龍が鞘に巻きついたような型の刀が、ナオが展開させた亜空間より姿を現した。黒龍はナオからその刀を受け取るとゴブリンに構える。ナオは目を瞑って三つ、数を数えた。それはまるで何かおまじないのように『三…二…一………』と。
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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時