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……ちゃん、
……ちゃん!
A!
『ッぅ、……高尾、君……リコ、さん……』
遠くで声がして、意識が夢のような場所から現実に戻っていく。
私は相変わらず得体の知れない、夢の中の女の子が言うにはキヲク、というものに捕まっている。
私の視界には黒いモヤがかかっていて、隙間から僅かに見えた高尾君とリコさんに手を伸ばした。
でも、その手は届かない。
締め付けられてはいないのに、息が苦しい。
頭が痛い。
〈キキ……キキ……〉
不快な音があっちからこっちから、色んな所から聞こえてきて私は眉間に皺を寄せた。
何これ、何なのこれ、
駄目だ、外で高尾君とリコさんが必死に私を助けようとしてるみたいだけど、かなり苦戦してる。
何で私、こっちに来ちゃったんだろう。
結局私が捕まって足手まといになってるじゃん。
私が来なかったら高尾君とリコさんなら何とか逃げ切れてたかもしれなかったのに。
私のせいで、無駄に体力を使わせてしまっている。
馬鹿だな、私。
『……ッ、逃げ、て……私は、もう……良いから……』
そして途切れ途切れにそう私が外の2人に言った時、大きな別の声がした。
「お姉ちゃんに触らないで!」
誰かが私の方へやってくる。
「ひまりちゃん?!危ないわ、下がって!」
「ひまちゃん駄目だ近付くな!」
ひまちゃんが、来てくれた。
高尾君とリコさんがひまちゃんを止めているけど、ひまちゃんは2人を振り切って物怖じせずに私とキヲクの前へ立つ。
伸ばされた手を掴むと、小さかった。
「怖いのはどっか行っちゃえ!怖いのは消えちゃえ!怖いのはお姉ちゃんから離れるの!こんな怖いの学校には要らない!」
ぐいっとひまちゃんに手を引っ張られ、思いの外簡単に私はキヲクの黒いモヤから抜け出せた。
ひまちゃんは私を守るように、前に立つとキヲクに触れる。
……正確に言えば触れているのか触れていないのか分からないけど、ともかく手を黒いモヤの中に入れていた。
「……ばいばい」
そしてそう言った瞬間すうっとキヲクは消える。
不快な音も、嫌な気配も何も感じない。
私は、ひまちゃんに助けられた。
「ひまちゃんすげぇ!」
「ひまりちゃんってこんな事も出来るのね……!はぁ、助かったわ、ありがとう」
『ひま、ちゃん……!ごめっ、助けてくれてありがとう……』
もうダメかなって半分あきらめかけてた私には、ひまちゃんは命の恩人だった。
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神崎セルザ@復帰しました(プロフ) - 繚乱ノ銀夜桜さん» そう思って頂けるだけで私は幸せです!!!←そう思わせるのが当初の目的だったりするので笑 (2017年5月18日 15時) (レス) id: 98008e40b1 (このIDを非表示/違反報告)
繚乱ノ銀夜桜(プロフ) - これ凄い…第三者って私の事か!?ってなったwww (2017年5月7日 13時) (レス) id: 3246732b26 (このIDを非表示/違反報告)
エコロ - 良太よ、お主やりおるの。神崎殿がそう思われる程輝くとは・・・!!← うちは千尋一筋だ!!・・・が和成があざといのです。同じ状況ですよ、ハイ。本当声優凄いですよね〜!イケボです!! (2017年4月5日 17時) (レス) id: 41909b66f3 (このIDを非表示/違反報告)
神崎セルザ@復帰しました(プロフ) - エコロさん» 黄瀬君に惚れそうになって、危ない!私は赤司様一筋よ!と何度なった事か……笑 声優さんはもう本当みんな声がイケボすぎてむしろ怖いですよね笑 (2017年4月3日 15時) (レス) id: 98008e40b1 (このIDを非表示/違反報告)
エコロ - はい、黄瀬が輝いてました。とっても良い意味で、です。うちも声優好きですよ! (2017年3月31日 23時) (レス) id: 41909b66f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神崎セルザ@復帰しました | 作成日時:2017年1月5日 12時