47話 ページ48
「祭り…」
わたしが繰り返して口にする頃には彼はスマホで調べていて
わたしが顔を上げたと同時に祭りを開催しているであろう駅名を口にした
そこは私たちの帰りの通り道で、それに気づいた彼は少し満足げな表情を浮かべる
「寄っていかね?」
ライブで疲れてるし、本当は足もぱつぱつだけど
でもせっかくのお祭りだったら私も行きたい
「いく!!」
気がついたら私は笑顔で返事をしていて
そのまま電車になだれ込むように乗り込んだ私たちはお祭りの駅で電車を降りた
プシュー
案の定私たちが降りると電車はガラ空き状態になり
駅のホームはパンパンすぎて危険な状況
でも、浴衣に身を包んで髪を括る女の子達はみんな輝いていて
浮かれている姿がわたしには少し魅力的に見えた
「浴衣、着たかったなぁ」
思わず口から漏れていた声にわたしは気が付かず
そんな言葉を聞き逃さなかった彼は人混みに紛れてわたしの手に触れた
咄嗟のことでわたしも頭が回らず赤くなってしまい
そんなわたしの顔を見下ろしながら彼は口を開いた
「浴衣着てたら、可愛かったんだろうな」
いきなりそんなことを言われて
言われ慣れてないわたしは固まってしまい、時が止まったような感覚になった
「な、何言ってんの!」
数秒間顔面を真っ赤に染め上げた後、咄嗟に口を動かすと彼は満足げにケラケラと笑い
「本音なんだけどな」と呟いた
彼は本当に素直で、優しい
ノリもいいしバカにしたりするけど
そんなところもきっと魅力的なんだと思う
そうやって思うのに私は素直に彼の愛を受け止められなくて
頭の中で
真ちゃんには可愛いってちゃんと言われたことないな、と他の男のことを考えていた
もう忘れたのに、忘れようとしているのに
ふと思ってしまう自分に嫌気がさしてしまう
このまま菅原の想いを誤魔化し続けてもきっと
菅原を傷つけてしまうだけかもしれないと気づいているのに
やっぱり忘れたいという想いを無理やり正当化する道具として見ている自分もいて
私はそんな自分が心から嫌いだ
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M - 安定の面白さ。黄瀬じゃないのに、、、今まで緑間普通だと思ってたのに、、、今日、りんさんが書いてくれる緑間に惚れましたw更新頑張ってください! (2020年12月6日 14時) (レス) id: 5e52fa6283 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2020年12月6日 10時