緑間真太郎は恋にも鈍感

38話 ページ39

事件は朝起こった。


生徒たちと顔を合わせる朝ごはんよりも前の時間に、先生だけが収集をかけられた


焦って会議室へ向かうと、昨日号令をかけてくれた偉い先生が袋を持っている

袋の中にはビールの空き缶が8本


「これがどういうことかわかるか」

先生の言葉とともに血の気が引いていく音を耳で感じて
俺は静かに息を呑んだ


「ロビーの外のゴミ箱で拾ったんだ」

そう呟く先生の声は少し悔しそうで、「先生方の中で飲んだ方がいらっしゃったら今ここで申し出ていただきたい」と続けた彼に、ゆるゆると首を振った




明らかに1人ではないその量に驚きつつ、それを堂々とゴミ箱に捨てる勇気にも驚いた

飛行機でチェックされるはずなので、こっちで買ったということになる

先生たちもショックのあまり言葉を失い、そのまま数秒固まってしまい
それを断ち切るように「朝ごはんの後に生徒たちに話そう」と先生が声を出した






朝ごはんを食べ終え、生徒たちに悲しいお知らせを伝え終わり
最後のちんすこう作り体験を終えた

あとはもう帰るのみ、なのだが

昨日と違い今日はクラス行動だったためか、心なしかあの2人を目で追ってしまう

母性のようなものなのだろうか
特に嫌だとかそういう感情が全面的なわけではないのだが、どこか胸にぽっかり穴が空いたような感覚に苛まれる

俺はまだこの感情を体験したことがなかった

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