緑間真太郎は恋にも鈍感3

124話 ページ25

「もー、Aまた潰れた？？」


「どーすんのよ」


「真ちゃん、最近うまく行ってないみたいだしなぁ」


私の背中を優しくさすりながら声をかけてくれている友達にきがついて
私はムクリと体を起こす

「…ん、大丈夫」

メイクを崩さないように小指を突き立てて目をかいて


私は完全にとろりと熱を帯びた目でみんなを見上げる


私の友達は二人とも横に男がいて

どうやらこのまましっぽり2人ずつ男女で飲みに行くらしい


他の女子はまだ楽しそうに他の人と喋っていて

まだぼやぼやとはっきりしない意識の中で、帰ろう、と決断したときだった

「…あー、Aちゃん結構気に入ったんだけど、俺、連れてっちゃダメかな」


「…えっ！？マジ？この人いい感じの男いるよ？」


ダメだ、頭が回らない


なんでこんな、飲んだんだっけ


近くにあった水をガバガバと一気飲みして
私はまたゆっくりと顔をあげる

「…ん、ごめん、私帰るよ」


その一言で、私を持ち帰ろうとしていた男の子は少し悲しそうな顔をして

そっと私の手を掴んだ

「送るよ」


私が送って欲しいのは、あなたじゃないの


「…ううん、大丈夫」


軽く手を振り解くと、それと同時にまたぐらりと視界が揺れて

私は机に体重を預ける形になった


「…ちょっと、いつもよりお酒少ないのに、どうしたの」


その様子に心配した友達はまた咄嗟に駆け寄ってくれて
私はそんな彼女の顔を見上げる


「…真ちゃんと、なんかあったの？」



その言葉に頭の中が真っ白になって
自分が今、どこで何をしてるのか、私は何故酔っているのか

一瞬全てが溶けて消えたように錯覚してしまう

「…、」


真ちゃん、なんて言葉今出さないでよ

そう思いながら熱くなった目頭をまた小指で抑えて


「…ううん、大丈夫、一人で帰れるから、」


精一杯の強がりを見せた私はまたムクリと立ち上がって
割り勘のためにお財布を取り出した






…はずなのに


どうして、目の前に真ちゃんがいるんだろう




なんで、そんなにびっくりした顔してるんだろう




「…真ちゃん？」





「お前、どうやって、、、」




「あれ、…私…」







そうだ、



帰りの途中、朦朧とする意識の中
不在着信の文字を見て

気がついたらここにきていた

シラフの時だって数えるほどしかきたことないのに


どうして道がわかったんだろう


じわりと歪む視界の中で、私はまた意識を手放した

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