98話 ページ49
Aの口から出た『さみしい』という単語がじわじわと俺の心を蝕んでいく
「…Aなら、すぐ友達もできるのだよ」
「…っ、…ぅ、…っ、」
声を出さないようにゆるく首を縦に振る彼女は、止めたいのに止まらない涙を我慢しているようで
俺はそんな彼女の元へ一歩ずつ距離を縮めていった
「出会った時はランドセル背負ってたはずなんだがな、」
鼻で笑いながら呟き、俺は無意識に彼女の頭に手を乗せる
恋心を教えてくれてありがとう、その気持ちを込めて
俺は髪を撫でるように優しく彼女の頭を撫でた
「卒業、おめでとう。」
何を伝えたいか考えても、さっきと同じ言葉しか出てこない自分は国語の教師は無理だななんてくだらないことを考えて
俺は目の前で鼻を啜る彼女のつむじを愛おしい目で眺めている
心のどこかでこの瞬間が特別だと感じ取ってしまい、無性に居た堪れない心になって
彼女にバレないように唇を噛む
すると、目の前で鼻を啜っていた彼女が小さい歩幅で俺の元へ駆け寄っていき
とすん、と音を立てて俺に体重を預けたAに、一瞬何が起こったかわからなかった俺はピクリと背中を震わせる
しかしドキドキと騒ぐ心臓を鎮めることもできなかった俺は、頭を撫でていた手をゆっくりと彼女の頭の後ろに回し
優しく優しく彼女を抱きしめた
「真ちゃん」
「なんだ」
鼻を啜りつつ少し落ち着いたのか、Aは小さく俺の名前を呼ぶと
俺の腰に手を回してさらに強く抱きついた
しかしその行動に俺は不思議と驚くこともなく、何も難しいことを考えずに腕を引き寄せる
「私が大人になっても真ちゃんのこと好きだったら…、私のことちゃんと迎えにきてくれる?」
今、絶対に好きと言うだろうなと思って覚悟を決めていたのに
彼女の言葉はとてもとても遠回しな告白で
俺は、大人になったな、としみじみしながらも口を開く
「あぁ。」
きっと俺が今、彼女の気持ちに気がついているように
彼女も俺の気持ちに気がついているのだろう
俺の返事に、ふへ、と気の抜けた笑いをこぼしたAは
するりと俺の体に巻きつけていた腕を抜き
熱い目でねっとりと俺を見上げた
「…真ちゃん、…」
やめろ、その目であだ名を呼ぶな、と決めていたはずの覚悟がぐらりと揺らいでいく
「…菅原に、無理矢理ファーストキス奪われたの」
そう口にした彼女の唇が少し色っぽく揺れて
「…」
俺は頭が真っ白になった
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りん(プロフ) - ぱなおさん» メッセージいただいたら書くしかねぇ!ってなりました!この小説はサクッと終わる予定なのでサクッと書きますね笑最後までお楽しみいただけたら嬉しいです! (2021年4月5日 9時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
ぱなお(プロフ) - りんさん» わー!!返信嬉しいです、更新もありがとうございます( ; ; )いつまでも待ち続けますので無理せずに更新してくださいね!!( ; ; ) (2021年4月5日 0時) (レス) id: a37a5acae8 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ぱなおさん» ぱなおさんありがとうございます( ; ; )最近リアルが鬼忙しくて投稿が滞っておりますが、終わる気はさらさらありませんので頑張って書きます!!これからもよろしくお願いします( ; ; ) (2021年4月4日 10時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
ぱなお(プロフ) - 最高すぎて一気読みしました!!続き待ってます( ; ; ) (2021年4月4日 1時) (レス) id: a37a5acae8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2021年3月4日 11時