tune.45 ページ45
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「‥‥え!? 三門市ですか!?」
「うん。だめか?」
放課後、例の如く着替えを済ませ適当な場所で落ち合った後、レオさんが珍しく場所を指定してきた。どこがいいのか聞くと、「三門市!」と元気な返事が返ってきたのである。
「だめでは、ないと思いますけど」
「よし! じゃあ行くぞ〜」
電車を使ってかなり時間がかかることを彼は知っているのだろうか。
どうして三門市なのかを尋ねると、「夢ノ咲じゃ見れないおまえが見たい」とのことだ。
「あの、レオ先輩」
「なんだ?」
「その‥‥大丈夫なんですか?
市街地に出ないとはいえ‥‥三門市ですよ」
私の少し先を歩いていた彼は足を止めて、こちらを振り返る。「───怖くない」
「でも───」
「おまえと一緒なら、何も怖くないよ」
真剣な顔で、そう言った。その声音は冗談でも強がりでもなく、心からのものであると、翡翠の目が言っている。
「‥‥それ、は」
「だからおまえは何も心配しなくて平気だ。
ほら早く行くぞ〜!」
それは、どういう意味ですか。
そんな質問を喉の奥に押し留めた。昨夜の、瀬名さんの言葉がぐるぐると頭を巡る。
(‥‥違う、そんなわけない。レオさんは、ボーダー隊員として私を信頼してくれてるだけ)
きっとそれ以上でも以下でもない。変な含みはない、‥‥はずだ。
自分にそう言い聞かせると、どこかにそれを否定しようとする自分がいて、少しだけ混乱した。
置き場のない感情を振り切るように、先を歩くレオさんの後を追った。
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「おお、ここが三門市か」
きょろきょろと辺りを見回すレオさんは、その特徴的な髪をキャップの中に押し込めている。伊達メガネをかけマスクをしているが、キラキラという擬音が似合うその笑顔は変装越しでもわかるほどだ。
「夢ノ咲とそんな違いますかね」
「都市部って感じがする! 夢ノ咲は海が近いし、ショッピングモールなんかもあるけどここほどじゃないしな」
私に夢ノ咲周辺が新鮮に見えたのと同様に、彼にも三門市が新鮮に見えているようである。少し微笑ましくて、そっとその横顔を眺めた。
「ボーダー‥‥の、基地?は、どこにあるんだ?」
「あっちですね。小さくですけど、ここからでも見えます」
ほら、と私が指差す方向に目を向け、目的のものが見えたのだろう。あれかぁ、と呟く。
「流星隊のやつらが喜びそうだな」
「‥‥否定はできません」
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時