tune.46 ページ46
·
「あれ？ A？」
適当に街を歩いてくれと言われたため散歩気分でぶらぶらしていたら、不意に名前を呼ばれた。
それは声の主を確認せずともわかるくらい聞き慣れたもので、無視しようかなという無慈悲な考えが一瞬よぎった。
しかしレオさんがその声の主を探し「呼んでるぞ」と袖を引っ張るものだから、立ち止まらざるを得なくなる。
「え、まじじゃん。Aだ。何してんの？」
そう言葉を重ねたのは出水で、呼び止めた張本人である米屋は紙パックのストローを咥えていた。
「おまえ今オレのことシカトしようとしただろ」
「誰ですか？ 言いがかりはやめてください人違いです」
「え〜ひどくね、オレ傷ついちゃう」
「A、知り合いか？」
レオさんの言葉に、渋々「‥‥ボーダーの、同僚です」と答える。ぶっちゃけ今このタイミングでは会いたくなかった。
「どうも、同僚と書いて友達と読みます。米屋でーす。こっちは出水」
「おー、Aの友達か！」
どうも、と出水が軽く会釈をした後、まじまじとレオさんの顔を見詰めた。些か不躾すぎやしないかと思ったが、レオさん本人は特に気にしていなさそうである。そうこうしているうちに、出水が目の前にいる人が誰か悟ったようだ。
「‥‥お、おい、A、この人まさか」
「お？ おまえおれのこと知ってるのか？」
「え、なに、弾バカ、どうした」
「馬っ鹿、よく見ろよ」
え？え？と米屋が言っていると、レオさんは人差し指でマスクを顎まで引き下ろし「じゃーん」と楽しそうに。
「うわ！ 月永レっ」
ばしん！という乾いた音が鳴った。出水が米屋の口を思いっきり塞いだのだ。
「アホ！ こんな街中でその名前を叫ぶんじゃねぇ」
「むぐ」
は〜、本物‥‥と2人は取り敢えずといった感じでレオさんと握手している。
「で、なんでAがこんなビッグ連れて三門歩いてんの」
「‥‥まぁ、うん、ちょっと色々ね。そういう2人は何してんの」
「おれらはゲーセン帰り。これから本部行ってランク戦」
「へー」
「興味なさそうな返事だな」
「おまえもこの後時間あるなら本部来いよ〜。太刀川さんが久々に遊びたがってたぞ」
「あの人限度を知らないから嫌」
「月永‥‥さんは、何でまたこんなとこに？」
私が答えないことを察知した出水が彼にそう振った。
レオさんに答えない理由は別にないし、ちょっと気まずいなぁと身じろぎした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ワールドトリガー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります！！ (2021年5月16日 22時) (
レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…！！ (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです！続きがとても楽しみです！ (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです！更新楽しみにしております！ (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…！のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏向 | 作成日時：2021年3月31日 16時
