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tune.42 ページ42

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「‥‥確かに性格は最悪だね。自分にないもの持ってるからって無差別に嫌うのは最低」

「はは」

「でも、才能がないからって努力もしないで嫌ってる人間よりは遥かにマシなんじゃないの」

予想外の言葉に、一瞬息が詰まる。
「‥‥私がそうだとは思わないんですか」

「あのねぇ、わざわざ夢ノ咲まで派遣されてくるような人が、実力がないわけ無いでしょ。それとも、近界民と戦うための強さは努力しなくても手に入るのぉ?」

「‥‥そんなことは、ありませんけど。
でも、戦う力はほとんど才能に左右されます。そしてそれが、私は低い」

「何それ。才能が数値化できるとでも言うわけ?」

「できますよ。少なくとも、ボーダーでは」

私はトリオン(戦う力)が少なかったから、努力で埋めるしかなかった。暇さえあれば訓練室に籠もって、戦って、ログを見て。それの繰り返しだった。

私よりもトリオン(戦う力)を持ってるくせに、やろうと思えばいくらでも上を目指せるくせに怠慢する訓練生を見れば苛立った。


「‥‥あんたも、天才ってフィルターかけてでしか、あいつを見てやれないの」

「‥‥先入観、ってやつですかね。はは、言ってて最低だな私」

「王さまはさ」

私の言葉に被せるように、瀬名さんは言った。
「去年の話だけど」と次の言葉が吐き出されるまで、随分と時間が掛かった。

「音楽の天才って呼ばれて、作曲のセンスもあったから、学院のいろんなやつらに頼まれて曲を提供してた。そいつらは皆王さまを頼りにしてた」

「‥‥‥」

「でも本当にそいつらがアテにしてたのは王さまの“才能”であって、王さま自身じゃなかった。王さまは純粋にそいつらが好きだっから、何度も何度も、何曲も何曲も作っては渡した。いいように利用されてるってことに気づかずに」

俺も馬鹿だったからさぁ、と彼は言った。後悔と自責が滲んでいた。

「あいつは俺に何度も好きって言ったけど、俺はあいつにそんなこと言ってやらなかった」

そしたらついに壊れちゃった。
「壊れた」、という言葉に背筋が寒くなった。
レオさんが半年もの間不登校だったのは、都合よく使われ彼自身の思いが一方通行だったことに気づいたからなのだろう。対人関係において、それほど虚しいことはない。

それから彼はしばらく作曲ができなくなったのだと、瀬名さんは締めた。

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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時

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