tune.20 ページ20
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「なぁ、転校生!」
レッスン後、後片付けや処理を終わらせ、さぁあとは本部に今日の報告を、という時に、彼からのお呼び出しがあった。
「千田Aです。どうかしましたか?」
「そうだ、Aか。
ちょっとこれ見てくれ!」
これ、と差し出されたのは五線譜ノートだった。走り書きのように音符がその中で踊っており、曲名らしき文字も見られる。
「見ろ、と言われましても、私 習い事でピアノやってた程度の知識しかありませんよ」
「それ見てどう思う?」
そもそも、今日やってきたばかりの転校生に楽譜を渡して意見を求めるなんて無茶苦茶が過ぎる。
仕方なくその場に座って、改めてノートを開いた。
他のメンバーは、私に鍵を預けて既に帰路についている。
「‥‥正直に言っていいですか?」
「いいぞ」
「曲名がダサいです」
「わはは! セナにもよく言われる!」
「メロディーに関しては、聴いてみないと何とも‥‥」
「じゃあ音楽室行くか?」
「え、今の時間からですか!?」
時計は既に18時を回っている。
今から職員室に行って鍵を借りて、さらにそこから‥‥となると、帰宅時間は一体何時になるのか。
「大丈夫大丈夫! ほら行くぞ!」
「え、ええぇ‥‥」
ぐいっと手を引かれ、勢いにつられて立ち上がる。手首を掴んだまま足取り軽く歩き出すものだから、ノートを落とさないよう慌てて抱え直した。
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「‥‥月永先輩て‥‥ピアノ弾けたんですね」
「聴き終わった感想の一言目がそれか!?」
曲の感想を聞かせてくれよ!と頬を膨らませている。その様子がなんだかおかしくて、思わず吹き出した。やんちゃな幼子のようだ。
「聴いていて心地いいメロディーでしたよ。なんと言うか‥‥するっと自分の中に入り込んでくるような」
「だろ! 俺は天才だからな!」
「はは‥‥」
「そうだ、おまえさっきピアノやってたって言ったよな?」
「言いましたね」
「ちょっと弾いてみろ!」
はぁ!?と声が飛び出そうになるのを慌てて抑えた。
そんな急に言われても困る。習っていたと言っても中学くらいまでで、ここ最近は訓練だなんだと忙しくて全く触っていない。
「いや、む、無理です」
「無理なんてことはないだろ」
「無理ですって、私もう2年は弾いてません」
「猫踏んじゃったとかでもいいからさ!」
先程同様ぐいぐい引っ張られ、ピアノの前に座らされる。
溜息を1つつき、仕方無しに鍵盤に指を乗せた。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時