10月、恋は現在進行形。【まふまふ】【お話つめあわせ】

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この歌の作者、河原左大臣は、かの有名な光源氏のモデルという説がある。
それだけ、風流で美しい容姿をもっていたということだ。

前から思っていたけど、改めてこうやって向き合うと、相川さんは本当に綺麗な顔をしていると思う。

優雅なお茶会で出される、高級な紅茶みたいな大きな瞳。
きりっとしていて、それでいてどこか優しい印象がある眉。
すっと通った鼻筋。
薄くて、お化粧をしたように血色のいい唇。
そして、CMの女優さんたちにも負けないくらいの透明感がある、白い肌。

まるでマンガのキャラクターみたいな、丁寧に作られた人形みたいな、人間離れした美貌。

こんなに顔が整った人は見たことないから、目が合うたびに、笑うたびに、胸がどきっとする。


相川さんに見とれつつ、友達は理解してくれない深い短歌の話で盛り上がっているうちに、教授が教壇に立って講義開始を告げた。

あまり長く話せなかったのを少し残念に思いながら、私は前を向いてノートを開く。



かりかり、かりかり。
つるりとした紙に、鉛筆の黒を乗せる音が、部屋中に響く。


講義がひと段落したとき、こっそり隣を覗いてみたら、相川さんは真剣なまなざしでノートをとっていた。
ノートの上には、教科書の中から飛び出してきたような綺麗な字が、どんどん生まれていく。


かっこいいなあ、なんて思った。


大好きな短歌の授業で、教授の話も面白かったけど。

一度意識してしまうと、隣が気になってしかたなかった。


早く話したいな。もっと話したいな。

そんな気持ちでいっぱいで、９０分がすごく長く感じた。



それがきっかけで仲良くなって、相川さんが喫茶店で働いているということを知って、来てみたのが始まり。

高校生まで田舎に住んでいたし、東京に出てきた今でもあまり喫茶店に行くタイプではないから、すごく新鮮だった。


店主さんは、若い綺麗なお姉さん。
栗原さくらさん、というそうだ。

同い年くらいに見えるけど、どうなんだろう。
優しくて、どこか安心感のある、あたたかい空気をまとった人だった。


相川さんが私のことを紹介すると、栗原さんは優しく笑って、「ゆっくりしてってね！」と声をかけてくれた。

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