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東京の大通りから、一本内側に入った知る人ぞ知る道。
ヨーロッパのどこかにワープしてしまったような、おしゃれな水色の扉が目印の喫茶店。
内装は木がモチーフで、シンプルにまとめられている。
そこにいるのは、女神みたいに優しいオーラをまとったお姉さんと、綺麗な顔をした上品なお兄さん。
こだわりらしいコーヒーは、いつ飲んでもびっくりするくらい美味しい。
私は、コーヒーにミルクをたっぷり入れて飲むのが好きだ。甘みと苦みが絶妙でたまらない。
どんなときでも、香ばしい香りが部屋中の空気を満たしている。
こんなにどこを切り取っても絵になる喫茶店を知ってる人がいたら、教えて欲しいくらい。
何度も行くうちに、ここの空気がたまらなく愛おしくなってしまって、今では実家より落ち着く場所だ。
レポートがうまくいかないときは、ここでコーヒーを飲んで心を落ち着かせて、栗原さんや相川さんとお話する。
そうすれば、なぜだか分からないけれど、いつもうまくいくんだ。
毎週のように通っているうちに、月日はどんどん流れていった。
喫茶店の隣の公園を見ていると、それがよくわかる。
葉が黄色くなって、赤くなって、ひらりひらりと舞い降りた秋。
少しだけ積もった雪に、子どもたちがはしゃぎまわった冬。
栗原さんと同じ名前をした木々が芽吹くころ、相川さんは大学を卒業した。
卒業式をこっそり見に行ったはいいものの、正装姿が似合いすぎていて、思わず栗原さんと顔を見合わせてしまったほどだ。
「あれ、真冬くんはうちのエプロン姿が一番だと思ってたんだけどなあ、笑っちゃうくらいかっこいいね。」
「私もエプロンが一番だと思ってました…。」
冗談を言い合って笑えるほど、仲良くなれたことがすごく嬉しい。
私は、話しかけたり話題をつくるのがあまり得意じゃないけど、ふたりはいつもゆっくり優しく聞いてくれる。
今では、聞き上手なふたりは、私が唯一心を許してリラックスして話せる相手だ。
私もあっという間に大学4年生。
また、大学ではひとりぼっちになってしまった。
講義のとき、隣の席がぽっかり空いている。久しぶりの感覚。
無性に古典について語りたくなっても、柔らかい笑顔で聞いてくれる彼は、隣にいない。
たった半年くらいの付き合いなのに、もとに戻っただけなのに、昔から私はひとりだったはずなのに。
さびしい。すごく、さびしい。
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ちょこ - かのこゆりさん» いえいえ、おかえりなさいです!コーヒーのお話、切なくてよかったです!また、コーヒーの違ったエンドや、コーヒーのまふくんsideも欲しいです! (2020年9月19日 10時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!返信遅くなってしまいすみません。実は受験生でして、受験勉強に集中するため活動休止していました。無事合格通知が届いたので、まもなく執筆再開予定です!気長に待っていただけると幸いです〜! (2019年12月25日 11時) (レス) id: fcfa2aebad (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!あとコーヒーの方のまふぃくんさお殿お話も!(´;ω;`) (2019年12月5日 20時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり(プロフ) - ともさん» コメントありがとうございます!すごく嬉しいです…。この作品は、キーワード(「喫茶店」など)を交換しお話を書く、という一風変わったコラボになっております。実はあと2作品分のキーワードを頂いていて、現在執筆中です!気長に待っていただければ幸いです! (2019年10月26日 23時) (レス) id: a6d1b02f5a (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 好きです!続き待ってます! (2019年10月24日 20時) (レス) id: 25fb5b2d6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのこゆり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kanokoyuri/
作成日時:2019年10月3日 23時