【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ37)

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少女の夢( 4 ) ページ37

こつ、こつ、とわたしに歩み寄る知らない人。

思わずわたしも後ずさる。うしろへ、うしろへ。

けれど、小屋自体はそう大きくないから、すぐに壁際に辿り浮いてしまう。

こわい、こわい。誰なんだろう、この人。

怖さを消したくて、近くにあった赤色のキャンディをぱくりと食べる。

…おいしい。これは、さくらんぼだったみたい。

そうして怖さを忘れようと飴を舐めていればわたしに黒い影が覆う。

目の前に、いたのだ。

黒ずくめの人が。

さっき聞いた声からすると、多分この人は男の人だ。それに、身体も大きいからきっと大人に違いない。

わたしはなんとか気を逸らそうと、このお菓子たちについて聞いてみることにした。

「………ぅ、ね、ねえ。どうして、こんなにいっぱいお菓子があるの？」

「これはねぇ…僕の作品なんだ。全部全部、僕のだ～いすきな甘いものでできた、最高に可愛い作品達さ。………それを、食べられてしまった気持ち、わかるかな？」

「っあ、あ………ご、ごめんなさいっ、おいしそうだったから、つい、」

どうしよう、気を逸らそうとしたのに、余計に怒らせちゃったかも。でも、声はそんなに怒ってない、気がする。

………なんて思っていた、わたしはバカだった。

「まあ、別に構わないよ。ただし…作品が減ってしまったから、また作らないといけないんだよね？」

そう言って黒ずくめの人がどこからか取り出したのは────小さなナイフ。

「……っ！？」

「そう怯えないで？君も、これから僕の作品になるんだよ。お菓子を食べたならもう既に君は僕の物。…大丈夫、君はとってもかわいいから、きっと素敵なお菓子になれるよ……♡」

すてきな、おかし？

…ということは、わたしが、たべたのって。

「ぁ……あ……………」

じりじりと詰め寄ってくる、黒い人。握られたナイフ。

わたしは怖くなって一目散に駆け出したけれど、手を掴まれて床にダンッ！と押し倒される。

打ち付けた背中が、すごく痛い。

それよりも目の前のナイフの方が、もっとこわい。

「やだっ、いやだっ！！やめて！やだ！！！やだぁっ！！！！」

「そう、駄々をこねては行けないよ？……僕、材料に無駄な傷は付けたくないんだ…………」

黒ずくめの人はわたしに馬乗りになって、片手で小さい両手首を抑え、もう片手でナイフを構える。

いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。

たすけて、だれか。