【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ36)

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少女の夢( 3 ) ページ36

……ふっと、意識が浮上する。

私が目覚めたそこは気味が悪い森の中。

木々が深く生い茂っていて森の出口なんかとてもじゃないけれど見えそうにない。それに、なんだか言葉にできない胸騒ぎがする。

どうして自分がこんな場所にいるんだとか、ここが何処なのか、なんてことはさっぱりわからない。

ただ、今の私の頭を満たすのはこの森から出なくてはいけない、という事だけだった。

…ともかく座っているだけではいけないのでとりあえず、その場で立ち上がってみると己の身体の違和感に気付く。

小さかった。

手が、足が、身体が。

「なに、これ、」

見渡せる景色は狭く、低い。どうして？…だが、驚きこそしたものの、私は歩かなくちゃいけない。

体を包む未知への恐怖と不安を押し殺しつつ、私はとぼとぼと森の中を歩き始めた。

─────

先の見えない森の中を歩き、辿り着いた先にあったのは小さな一つの小屋。

見知らぬ森の見知らぬ小屋、恐怖こそあるものの慣れない身体で歩き疲れた私は、おずおずと小屋の扉を開け中へと入る。

…すると、なんということだろう。

家の中はたくさんのお菓子で溢れていた。

ケーキにプリンにチョコレート、クッキーにアップルパイに可愛いマカロン。

並べられた綺麗なお菓子に思わず幼い私の瞳は輝いた。

夢のような空間。

女の子の夢が詰まった、幸せな場所とでも言えようか。

「わあ、すごく、きれい…どれも、これもおいしそう……」

キラキラ輝くお菓子たち。けれど、ここのお菓子を食べてしまってもいいのだろうか。怒られたり、しないだろうか。

そんなことを考えていれば、私の手が勝手にお菓子へと伸びてぱくりと桃色のマカロンを口にする。

食べちゃった。

…いちごの味があまくて、とってもおいしい。怒られてしまうかもしれないけれど、もっと食べたい。

気付けば私の頭の中は出口の分からない森の事より、目の前にあふれるお菓子達の事でいっぱいだった。

幸せな味にもういっこ、と手を伸ばせば小屋の扉がギィィ、と開く。

「……おやおや、僕のお菓子を勝手に食べちゃったの？」

そこに現れたのは全身黒ずくめの人。顔はフードで隠れてよく見えない。

…当然、勝手にお菓子を食べてしまったのだから、怒られてしまうのは当然の事だ。

けれど、入ってきた人が自分の知らない人という事も相俟って、私の身体はかたかたと震えだす。

こわい、こわい。おこられちゃう。