【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ13)

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1章　魔法使い( 11 ) ページ13

今日はいろんなことがあったなぁ。
そう考えながら外していたイヤホンを耳へと戻す。

プレーヤーの音楽も再生させればばっちり、また街の雑音は聴こえなくなって、私の視界に入る綺麗な景色と好きな音色。

そう、これでいい。これが私の好きな世界だ。
私も彼の様にベンチから立ち上がればん～、と大きく一度伸びる。

ずっと座っていたからか身体からぱきり、骨の鳴る音。…運動不足も少しあるかもしれない。今度公園にでも行って軽く運動でもしようかな。

………誘う人は凛月あたりでいいだろう。何だかんだ彼も夜中は暇しているだろうし、うん。

ちなみに、凛月というのは近所に住んでいる一個上の高校生。家が近くて夜中の時間を持て余している同士そこそこ仲良くしていたつもりだ。

そんな凛月も夢ノ咲の生徒らしいので夢ノ咲についての情報は彼から教えてもらったものだったりする。と言っても、そんなに詳しい事は分からないのだが。

最近見ていないけれど、元気なのだろうか。

…まあ、元気だろうと結論付ければ座っていたベンチを後にして歩き出す。
夜空の闇も深まってきてはいるが流石夜の街と言ったところか、人々はまだまだ行き交っている。そんな街へさよならを告げる様に視線を街から足元へと落とした。

これで今日の散策はお終い。けれど、今日は普段とは違う、特別な日だった。

魔法使いに、出会ったのだから。

────

街を抜け住宅街を歩いていればふと、自分の身体が普段よりも体が軽い様な感覚に気付く。

普段なら数時間とはいえ身体を動かしているのだから肉体も疲労を感じる筈なのに、今日は殆どそれを感じない。

身体を纏うはずの疲労感の無さに驚いた私は道端で思わずマジか、と呟いてしまった。

幸い、スマホの時刻は一時半を回っていたので住宅街に人影は見える事はなく、誰かに聞かれる事もなくて助かったのだけれど。

今日、出会った、不思議な人。

逆先夏目くん。魔法使いを名乗る彼。

この身体の軽さが本当に彼の魔法の力であるのなら、魔法は本当にあるという事になる。…そう信じせざる負えないだろう。

ふわふわと軽い足取りで歩いていれば自宅へと到着した。

玄関のドアへ手を掛け、考える。

彼ならば、もしかしたら私の身体も魔法で直せてしまうんじゃないか、なんて。

「…疲れてるのかな、そんな事、きっと夏目くんでもできないよ。」

自分の甘い考えを自嘲するように呟けば自宅のドアをがちゃりと閉めた。