18.暖かい部屋〜翔side〜 ページ18
長かったような、短かったようなメールだけのやりとりのキミとの時間。
いつかは来ると期待していた
キミの笑顔がこんなに近いこの空間。
キミはやっぱり思い描いていたままの
ふんわりとした女の子で…。
久しぶりの甘酸っぱい感覚がくすぐったい。
栗色の柔らかそうな髪を一つに結んでミント色のリボンを付けてるだけのシンプルなスタイルなのに、それがやけに可愛くて。
あんまり見てしまうからAチャンも俺の視線に気まずくなったみたいに
A「ごめん！気がつかなくて。ビールでも飲む？」
と、腰をあげた。
翔「いや、頂きたいのは山々なんだけど。俺、この後生放送なんだ。」
と、いいながら時計を見る。
A「わ！そうなの？忙しいのに…。わざわざありがとう。時間大丈夫？」
翔「もうちょっと大丈夫かな？…てか、Aチャンって結構飲めるの？」
って、また質問(笑)
A「一人では飲まないよ？翔クンは？」
翔「俺は一人でも飲むな。」
そして、俺はかなり気になってたコトを聞いてみた。
翔「この前の観覧ってさ、誰見に来てたの？」
A「えっ？」
彼女がすごく不意をつかれた顔をしたから
翔「あ、言いたくなかったらいいんだけど…。」
なんて、気にしてない振りをした。
本当は気になるけど。
A「…翔クン、だよ？」
翔「えっ？！」
聞き間違いだと思ったから
もう一度聞きたくて聞き返してしまった。
A「友達が翔クンの大ファンなの…。わたしは付き添いで(笑)」
そう言うことか。
でも、あの一生懸命みてたアーティストじゃなかったんだ。
なんてホッとするなんて、俺ってバカだな。
A「まだ、ゆっくりできる？」
え？
まだ居ていいのかな。
てか、そのおねだりかわい過ぎるんですけど。
翔「あ、あぁ…。まだ、30分くらいらは時間ある…けど。いいの…？」
A「美味しいりんご貰ったの。ちょっと待ってて。」
そう言ってカウンタースタイルのキッチンに入ってりんごを剥く彼女をテーブルに頬杖ついて見ていた。
なんか、ここは暖かい…。
Aチャンの雰囲気なのか。
ほんのりと暖まるオイルヒーターのせいなのか。
暖かい空気に包まれて
目まぐるしく日々をこなす俺の脳が暖まるのを感じて
彼女の包丁の音だけが響く中で目を閉じた。
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作者名：茉莉
| 作成日時：2012年11月23日 23時
