17.質問攻め ページ17
翔「ゴメンね。上がるつもりなかったんだけど。」
ポトフの湯気の向こうでリビングに座った翔クンが申し訳なさそうに言った。
A「ううん。昨日ポトフ作り過ぎちゃって。食べてもらえると助かる。」
ポトフを二つお皿によそって、翔クンの前に一つ。
もう一つをどこに置くか少し迷って向かい側は恥ずかしいから右側に置いた。
翔「ねぇ、俺、こんな図々しく上がり込んで飯食おうとしてるけど、俺達まだちゃんと会うの2回目？」
そんなわたしを目で追いながら翔クンが言った。
A「でも、なんかそんな感じしない(笑)」
翔「そうなんだよね。
って、でも飯は図々しくない？といいながらもいたたきますけど(笑)」
A「ふふ。どうぞ。」
と、言って翔クンの右側に座った。
いただきます。
と、両手を顔の前であわせてスプーンでスープを口に運ぶ様子をジッと見る。
翔「あ、うまーい。」
翔クンにそう言ってもらえてホッとして自分もスープを口に運ぶ。
翔「Aチャンって結構料理するの？」
A「するよ。ほとんど毎日。安給料ですから。」
翔「そうだ。Aチャン、仕事って何してるの？」
A「幼稚園。」
翔「え？幼稚園って、先生？」
こくん。と頷くと
翔「ぽいねー！」
と、大きな目を更に大きくして改めてわたしを見る。
翔「ほんわかしてるもんね。」
と、ふわっと笑ってまたスープを口に運ぶ。
そうやって笑う翔クンの回りの空気がほんわかしてるよ…。
きゅうっと胸が苦しくなる。
翔「Aチャンってさ、いくつなの？」
A「翔クンと、同じだよ？」
って、ナオが言ってたっけ…。
翔「え？81年？」
A「早生まれだから82年。」
翔「じゃあ、ホントに同い年だ。俺、1月だから。Aチャン何月？」
次から次へと質問が出てくる翔クンが嬉しくて緩む口を両手で覆った。
そんなわたしを見て翔クンが
ん？
と、首を少し前に出して笑う。
A「うふふ。なんか、今日の翔クン質問攻めだね。ずっとメールしててもそんなコト聞かなかったのに。」
翔「だってさ、顔みたら聞こうと思ったてたからね。会った時は色々話したいからさ。」
その言葉に胸の何かが弾けて溢れだす。
そうなんだ…。
わたしに興味がないんだとばかり思ってたけど、そんな風に思ってくれてたんだ。
近くて遠く感じていた翔クンが今ここにいて、わたしを見て笑う。
少し近くなった彼の笑顔に軽く目眩がした。
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作者名：茉莉
| 作成日時：2012年11月23日 23時
