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ーーー 多分、一目惚れだった。
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私が北条Aと出会ったのは、およそ10年前まで遡る。
小学生になりたてのとき、何の変哲もない日。
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いつも通り、本を読んでいた、そんな日だった。
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突然3人くらいが部屋に入ってきたと思ったら挨拶をされて、顔を上げるとそこに居たのはお父さまと見慣れたメイドとやってきたのは、同じ歳くらいの女の子。
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人形のように白い肌、大きくて丸い瞳。
思わず見惚れてしまったことを今でも覚えている。
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初々しげなその様子に何か言わなくては、と思って何とか口から出たのは、思ってもいないような言葉。
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「僕と同じ位の歳なのに坊っちゃまって呼ぶなんて失礼だと思わないんですか」
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そう言った時の、Aさんの顔も、…今でも鮮明に覚えている。
驚いたように目を見開いて、その瞳に怒りが宿る。
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あ、…やってしまった。
そう思ったつかの間、父からAさんがお世話係になるということをきかされる。
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「はぁ?!お父様、どういうことですか?!」
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またでてしまった言葉は、本心で。
この可愛い女の子とずっと一緒になるのかという戸惑いだった。
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そのとき並々ならぬ視線を感じて、振り向いたら白々しいほどの笑顔でこちらをみているAさんがいた。
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『…よろしくお願いしますね、坊っちゃま』
「…………」
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どう考えても、怒らせてしまっている。
それでも弁解する言葉も思いつかなかった当時の私は黙り込んでしまった。
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しばらく過去編が続くと思います!
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