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7.Ki ページ31

Ki side




漆黒の暗闇に、灯りが点った。

静まり返っていた寝所に、人々の足音と共に気配が戻って来たのが分かった。



T「ミツ、大丈夫?」


心配そうに俺を覗き込む陛下に、俺はハッとする。

T「何処か、怪我してない…⁈」


寝所の片隅にぼんやり座り込んでいた俺は、ついさっき俺を腰砕けにしたあの唇に視線がいき大仰に後退る。


Ki「あ、いや…俺は…」

T「今、侍医を呼んでるからミツも…」

Ki「いや、俺なんかよりも陛下が…陛下が、お怪我されたんじゃないですか⁈」


俺を敵の刃から救った陛下は、間違いなく負傷したはずだ。

俺の耳は、あの時確かに敵の刃が陛下を襲った音を聞いた。

しかも…


T「オレなら、大丈夫だよ。…少し単衣を破いてしまったけどね」

Ki「え、でも…」

T「ミツには、怖い思いをさせたね」

ごめんね、と俺を引き寄せた陛下の腕に身体を預ける。


渡殿の床板に残る、赤い血痕……


視線の先が捉えた光景は、俺に何かを訴えていた。





その後、清涼殿の警備が増員された。

半年前、先代帝が暗殺されたというのに、昨夜の夜盗騒ぎだ…すぐに箝口令が言い渡されたが、不安が広まるのは早かった。



翌日、俺は上官である侍従長から呼び出しを受けた。

事件当夜、陛下のお側に仕えていながら何も出来なかったコトを激しく叱責された。


侍従長「北山、お前…陛下の御身に何かあったら一体どう責任を取るつもりだったんだ!」

Ki「…申し訳ありません」

お守りするどころか、逆に命を助けられた俺に反論する余地なんてなかった。

…それなのに、だ。


T「侍従長…そなたの立場は分かるが、オレはそんなコトは望んでいない」

侍従長「陛下」

T「北山、紫宸殿に行くから供を命じる」

Ki「…畏まりました」


侍従長から解放されて、目の前を歩く陛下の背中に俺は胸が詰まる思いがした。

それは、全てを吹き飛ばすくらいの溢れ出す感情だ。


Ki「陛下…お受けします」

T「えっ?」

Ki「陛下がお望みになられるのなら、私は…」


その瞬間、俺の後宮入りの覚悟は決まった…はずだった。




数日後ーー


出仕を控えていると聞いた藤ヶ谷の姿を見つけて、俺の足は無意識に引き寄せられた。


Ki「藤ヶ谷、お前宮中への参内…」

偶然触れた右腕に、大仰に反応した藤ヶ谷に俺の方が驚いた。


F「…触るな」

さりげなく藤ヶ谷が庇った右腕に、俺は違和感と確信を同時に覚える。


Ki「お前、右腕……怪我したのか?」



【秋の章・完】

冬の章・冬桜→←6.Ki



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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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