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2.Ki ページ15

Ki side




昭陽舎・梨壺ーー。


春のあの日…初めて訪れたこの場所が、今や俺の職場となった。


春の除目が発表された時、

2「マジかよ、ミツがっ⁈」

S「凄っ…!」

二階堂と千賀が口を揃えて、俺の新たな官位と所属する官省に驚いていたが、それが正しい反応だと俺だって思う。

でも…




東宮職事務官として、東宮殿下の周辺のお世話回りをするのが俺の今の務めだ。


だから、こうして毎朝宮中に参内したら東宮の居室を訪れ、侍医の朝の回診にだって同席する。

憧れの人の素肌を初めて見た時、それこそ心臓が痛くなるくらい緊張した。



侍医「今朝も特に問題はないですね。何かありましたら、お呼び下さい」

T「…ん」

侍医「では、また明朝お伺いします」

T「あぁ、いいよ。自分で直すから」


介添えの女官が東宮の身に纏っている夜着にあたる単衣(ひとえ)に手を伸ばしかけたのをやんわり制して、人払いをする。

侍医と女官たちが退がると、2人きりになった寝所で殿下が俺を呼んだ。


T「ミツ、手伝ってもらっていい?」

Ki「あ、はい…」

お側近くに歩み寄り、俺は寝具に落ちた単衣に触れる。


Ki「殿下、どうぞ」


その肩や腕に触れないようにしていたら、露わになった素肌に不躾に視線を走らせている自分がいた。

透き通るような白い素肌は、息を呑むくらいの美しさだ。


T「ミツ、緊張してる? オレが頼んだんだし、別に触れても構わないよ?」

Ki「いや、それは…」

T「ミツは特別」

俺の方を見て笑う殿下は、とても無邪気だ。


Ki「では、私は一旦失礼して、別の者と交替致します」

寝所から辞去しようとした俺は呼び止められて、振り返る。


T「ミツ」

Ki「はい」

T「宮内省勤めは、どう? 少しは慣れた?」

Ki「まぁ…」


宮内省は、皇族方の私生活に密接に関与する官省なので中務省に続いて、宮中では花形の務め先と言われている。

だから、以前から勤める俺より官位も上の重鎮たちも多く、俺みたいな新参者は正直やりづらい。


Ki「俺みたいな官位の者には、勿体ない勤め先です」

T「ミツはオレの命の恩人なんだから、オレはミツが側にいてくれたら安心するよ」

Ki「そんな…」


殿下はそう言ってくれるが、あの春の夜…確かに殿下が紫宸殿にいたら、今ここにこの方はいない。

でも、別に俺が殿下を救った訳じゃない。


T「ねぇ、例えばオレがミツと一緒にいたいと願ったら…ミツは、その願いを叶えてくれる?」

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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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