検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:165,936 hit

12.Ki ページ13

Ki side




F「ここで、何を…」


藤ヶ谷の声が、夜の空気を切り裂いた。

そして、その視線は真っ直ぐに俺に注がれる…正しくは、東宮殿下に握られた俺の指先だ。


Ki「いや、これは…」

T「藤ヶ谷、お前を呼んだ覚えはない」

Ki「殿下…」


突然、2人を包む空気が緊迫したものに変わった事態に、俺は戸惑う。



Ki「殿下、宴の席に戻りましょう?」


そう促しながら、俺は自然の動作で繋がれた指先を解く。


俺のような身分の者がお側近くに寄り、ましてや触れて許されるお相手ではない。

そのコトを藤ヶ谷は怒っているのだ、と直感で思った。



F「殿下、紫宸殿にお戻り下さい。殿下の不在は、周囲の者たちの不安を煽ります」

T「藤ヶ谷、お前も聞いていたのだろう? オレは戻らない。そもそも、ああいう宴は…」

F「今宵は、今上帝御自ら開かれている宴。それを東宮自ら無視されるおつもりですか?」

T「そんなつもりは、」

F「であれば、大人しく紫宸殿へお戻り下さい。今であれば、まだ大ごとにはならないでしょう」

T「…それでも戻らない、と言ったら?」


対峙する2人の間に立ち尽くす俺は、背筋が凍る思いだ。



F「…それならば、北山はお返し下さい」


藤ヶ谷の言葉に、俺は顔を上げた。


T「元々、ミツを呼んだのはこのオレだ。横取りする気かっ⁈」

F「東宮殿下は、おかしなコトを仰られる。今宵、北山と約束していたのはこの私…ですから北山を探しに来たのです」


Ki「……⁈」


今のは……空耳、か?


そう耳を疑うくらい、藤ヶ谷の話は寝耳に水で…えっ⁈ 今宵、藤ヶ谷と俺が約束⁈

俺の頭の中が、疑問符で埋め尽くされるまでにそう時間は要さなかった。



T「へぇ、ミツと約束…」

その双眸が、ゆっくり移動して俺を射抜いた瞬間……それは起こった。


T「ねぇ、ミツ…」



………‼


それは、宴の最中の紫宸殿の方向からだった。

人々の悲鳴が飛び交い、明らかに何か予期せぬ異変が起きたコトを知らせる不吉な胸騒ぎに振返る。


バタバタバタ……‼


渡り廊下を走る幾つもの足音に、俺たちは息を呑んだ。


F「一体、この騒ぎは何だ⁈」


従者「大変です! それが…」


F「何だと⁈」

T「そんな…!」


今度こそ夢だと思った。


Ki「…嘘だ…だって…」


見上げた春の夜空に浮かぶ霞んだ月が、俺達3人を見下ろしていた。

その夜の出来事は、きっと忘れるなんて出来ないだろう。


数日後、今上帝が崩御したーー。



【春の章・完】

夏の章・空蝉→←11.Ki



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (336 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
565人がお気に入り
設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。