45、貴方の理想は燃え尽きない ページ46
××
フョードル・ドストエフスキーが逮捕されたことにより、今回の一件───共喰い事件は一旦落着した。否、落着という云い方は正しくないだろう。落着したわけでも、解決したわけでもないのだから。
「Aちゃん、本当に良かったんですの？」
電話の向こうでナオミ少女の静かな声が聞こえた。
「はい。福沢社長の快癒祝いに参加出来ないのは残念ですけれど……私にはすべきことがあるので。ナオミ少女は私の分まで楽しんでください！」
「でも……矢っ張りAちゃんがいないのは寂しいですわ」
「……お土産話、たくさん聞かせてくださいな。フランシス先輩の豪華客船がどんなものなのか気になりますし！」
明るい声を出してみれば、「約束しますわ！」とナオミ少女の声も元気を取り戻して少し安堵する。それから少しお話して、電話を切った。
*
「……おまえか……」
私の顔を見るなり、看守の方に連れられやって来た国木田先輩は顔を歪めた。痩せこけた頬、両手につけられた手錠。思わず叫び出しそうになるのをぎゅっと堪える為に、私は自分の手に爪を立てた。
───国木田先輩にかけられた容疑は殺人だった。貧民街の少女を殺したという容疑。私は知っている。国木田先輩は貶められた。
「国木田先輩。差し入れの本を先程渡したので、後で読んでください。本当はお握りにしようと思ったのですが、食物は駄目らしくて──」
「……A。もう、良い」
「何が良いのですか、何も良くないでしょう。
何も……良くないから問題なのでしょう」
国木田先輩は唇を噛み、下を向いた。
私は一呼吸置いて、また口を開く。けれど云おうとしていた言葉は見当たらなかった。
国木田先輩が逮捕されて冷たい牢獄にひとりでいると考えたら、私は船上パーティーなんて行く気には到底なれなかった。だって、国木田先輩がいないのに。
「……A。俺のことは気にするな」
「それは……それは、無理な相談というものです、国木田先輩。あなたは私の先輩でしょう……っ、」
目の奥に溜め込んでいた熱いものが、一気に溢れ出してしまう。少しでも気を紛らわせようと、ひたすら手を引っ掻いた。
「……おまえが泣いてどうするんだ」
「分かりませんか、国木田先輩が泣いてくださらないから私が先輩の代わりに泣いて差しあげているのですよ」
随分と口が達者になったな、と国木田先輩は苦笑を零した。ああ、大丈夫。まだ変わってない。私の知る国木田独歩先輩のままだ。
**
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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