私 ページ14
Aside
霞んだ意識の中、私はゆっくりと瞬きをする。
「・・・。」
気が付けば私は真っ暗な空間に立っていた。
辺りを見渡しても何もない。
何も聞こえない。
ただただ、どこまでも深い暗闇が続いている。
「・・・。」
どうしてこんな所にいるのか、訳が分からないまま
私は歩き出す。
すると、どこからか聞こえて来た音。
それは、誰かの泣き声だった。
私は自然と、その泣き声の方向へと足を進める。
「・・・。」
『っ・・・ぐすっ・・・・うぅ・・・。』
足を進めていると、暗闇の中で突如として現れたのは
幼き頃の私だった。
ボロボロの服を身にまとい、
傷だらけの細い体を自分で抱きしめながら、
床に倒れて、声を押し殺しながら静かに泣いている。
「・・・。」
この幼い私は、隼人と出会う前の私だろうか。
夜になると酒とタバコの匂いを身に付けながら
帰って来る母。
母は私に「愛してる」と言いながら暴力を振るった。
体は痛いし、寝る床は固いし。
辛かったけれど・・・
母は私を愛しているんだと。
私は信じていた。
母親の命令ではあったけど、
笑って居ればいい事があると信じて
毎日、顔に笑顔を張り付けて、
心の中では泣いていたあの頃。
隼人と出会ってからは少し心にも余裕が
できたような気がする。
隼人は・・・私を褒めてくれたから。
「・・・。」
昔の事を思い出しながら、私は床に倒れる
幼い自分を見つめる。
すると、私のすぐ近くに音もなくあの人が現れた。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年7月30日 10時
