母 ページ15
母「私は誰かの親になったつもりは無いわ。勝手に生まれてきて迷惑してたのよ。しかも女。」
「・・・・・・。」
倒れて泣いている幼い私に母はそう言いながら
近づいた。
その母の隣には、あの日、私を売るためにやって来た
男も立っている。
男「なんでもいいけどよ。まぁ、少しくらいは愛情持って育てたんだろ？」
男は隣の母の顔を覗き込むようにして話しかける。
母「そんなわけないじゃない。愛してるって言葉を発しただけよ。その言葉に意味なんてないわ。」
「・・・。」
母は幼い私を無表情で見下ろしながら言った。
そして、そのまま踵を返すと男を残して去って行った。
男は幼い私の手を引いて無理やり立たすと、
母親とは反対の暗闇に向かって歩き出した。
「・・・。」
私は黙ってその場を見つめていた。
母親が私に言っていた「愛してる」という言葉は
ただの音に過ぎず、意味など持たなかった。
あの時、私はその事実を知って、絶望したのだ。
そして・・・
私は、変わった。
笑っていなさいと言っていた母は居ない。
私は今までの感情を今度は笑顔ではなく、
無表情によって隠すようになった。
男「お前は道具に過ぎない。殺せないなら死ぬだけだ。」
「・・・。」
次に、暗闇の中から現れたのは、私が売られた先の
暗殺を生業として生きていた男だった。
そこで私は、幼いながらに様々な事を学んでいった。
拳銃やナイフなどの武器の使い方。
人の殺し方。
ヤバい薬などの闇取引
武器の密輸、売買方法
などなど、様々だ。
そこには、私以外にも同じように買われた
子供達が暗殺の仕事をしていた。
子供という事だけでターゲットは気を抜くのだろう。
だから、子供の暗殺者は高く売れるし、使いやすい。
それに自分で育てるならば安く仕入れる事が出来る。
私は数ヶ月間、そこで暗殺の仕事を学んだ後に
売られて買われるを繰り返し、拠点を点々として
生きていた。
ただの道具である私に人権など無く、
床で寝るのは当たり前で、
自分で食料を確保し、
ターゲットを殺して、
寝る。
そんな生活を繰り返していた。
「・・・・。」
思い出される幼い頃の記憶。
その記憶は綺麗ではなく、汚くて、赤い景色ばかり。
それでも、私は暗殺者としてのセンスが良かったのか、
あんな生活の中でも生き残る事が出来た。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年7月30日 10時
