夜空を見上げる鮫と月 part８ (ページ13)

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僕にできる事ページ13

僕は倒れているAから
スクアーロへと顔を向ける。

　マ「・・・それで、僕を呼んだのはAの事でしょ？」

　ス「あぁ。マーモンは心理学とか行動学とかそういう事に詳しかっただろ？」

僕はスクアーロを見つめると、本題に入る。

僕は霧の幻術使いだ。

幻術は人の目を誤魔化し、無い物を有るように。

有るものを無いように見せる事が出来る。

人間と言うのは、視覚情報に頼って生きている。

この世の中、「見たものしか信じない」と言う人が
存在するくらいだ。

そんな幻覚が使える僕は、相手の心理に影響を
及ぼせるような幻術を扱えるようになりたくて
様々な知識を身に付けた。

その中には、スクアーロが言ったように相手の心理や
考えている事を読み取るための心理学や、人間が取る
行動、動作などの事が分かる行動学なども学んでいた。

　ス「Aがこの状態になった原因が知りたい。マーモン。お前、見てくれねぇか。」

　ザ「・・・。」

スクアーロは僕を見つめると複雑な表情を浮かべながら
頼み込む。

そんなスクアーロの後方、ソファーに座るボスを見れば
ボスも僕の事を黙って見つめていた。

　マ「・・・。」

　ザ「・・・・。」

これはきっと・・・ボスからの頼み事でもあるのだろう。

だとするならば、断る事は無い。

僕はボスの為にここに居るのだ。

僕の幻覚は相手の精神世界にも影響を
与える事ができる。

それは夢の中に勝手に入るようなもので、そこで相手が
恐れている事や苦手な事などの情報を引き出したり、
逆に情報を植えつけたりできる。

これでAの深層心理を見れば、その辺の精神科医
よりも詳しく何が原因なのかが分かるだろう。

　マ「・・・いいよ。見てあげる。それと、報酬も別にいらないよ。」

僕はそう言うとスクアーロへと視線を戻す。

　ス「！・・・いいのか？」

僕の言葉を聞いて、スクアーロは目を見開く。

僕が無償で動く事なんて珍しいから、
驚いているのだろう。

　マ「Aがこんな状態で居るのは・・・僕も嫌だしね。」

僕は呟くようにそう告げると、床に倒れている
Aを見つめる。

Aがこの状態になってから、ヴァリアー全体の
雰囲気は暗い。

皆、Aの事が心配なのだ。

マ「・・・。」

　「・・・。」

僕は床に寝ているAに再び近づいて顔を覗き込むと
Aの額に、そっと手を当てた。