いちごオレにビターをかけて…【松野おそ松】

いちごオレ29 ページ30

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胸糞悪い。


新しく入った監督に、これでもかっと言うくらいに、

こっぴどく起こられてしまった。


年期のはいったadidasu のジャージに

黄土色のキャップ。年は結構いってて、口と鼻の下からは髭が

綺麗に生えていた。


一見、監督らしい格好だが、今の時代こんな薄汚い人なんていない。


声は大きいし、数学の先生かよ。


久しぶりに怒られたせいか、悪口がポンポンっ弾け飛ぶ。


つい、さっきだって。


「君は、本当に彼女の事が好きなのかね？

無理矢理してる感じが半端ないさ。これじゃ、普通のドラマじゃないか

顔だけじゃ、これから先生きていけんぞ。」


彼女と言うのは、相手役の女優さんだ。

鼻息を荒くさせ、オレの顔を覗いてくる監督の言い方は、

オレのすべてを、人生を否定されているようにも感じられた。


顔だじゃ、生きていけないなんて自分がよくわかってる、

だから、どうにかこうして、役作りをしているんじゃないか。


一人きりの楽屋で、足を揺らしながら、椅子に八つ当たり。


「て言うか、あの女優一個もかわいくねーし！


好きになれるかっつのー！


あんな奴より……アイツの方がっ…！じゃなくて…」


終わりの方は気力がなくなって、声がだんだん弱くなってしまった。

オレは、言いかけた言葉を飲み込む。

アイツだなんて、オレは誰の事を言いかけたんだろう。

無意識でアイツだなんて言ってしまった。

"アイツ"のワードにはまる人物は心辺りはある。いくつもだ。


だけど、どんなにオレが可愛いと思った女優さんの名前を入れても

何故かしっくりこなかった。

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