0017 you ページ17
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「瑠姫先輩。」
放課後。日直の景瑚を待たずに先輩の教室前から名前を呼ぶと、それに気付いた先輩がこちらを向いてニコッと笑いながら手を振った。その後ろの純喜は、驚いたように瞬きを繰り返しながら先輩と私を交互に見ている。
勘違い、されたりしないかな。
純喜を見てそんなことが頭を過ったけど、すぐに瑠姫先輩へと視線を移す。近付いてきた先輩と、その後ろからついてくる純喜。
「なんでAが瑠姫に会いに来てんの!」
「だってお前、はるかちゃんとデートだろ?」
「え、なんで知ってんねん」
「昨日Aちゃんから聞いた。あーあ、悲しいよな、親友から何も言われないなんてなー!」
「言おうと思ってたんやって!まじで!ごめん!」
わざとらしく顔を歪めて手をこすりながら謝る純喜と、それを分かっていて笑いながら拗ねたふりをする瑠姫先輩。微笑ましい2人のやり取りに笑っていると、廊下を歩いてきたはるかの姿を見つけて手を振る。
「何、この人たち。」
「純喜が、はるかと付き合ってること瑠姫先輩に言わなかったからね」
「それで瑠姫先輩が拗ねたんだ?」
子供みたいだね、なんて2人で言っていると、今度は廊下を走ってくる景瑚の姿が目に入る。
「走らなくてもいいのに。」
「瑠姫先輩のことだから、俺が居ないのを良いことにAと2人きりになろうとしちゃうかと思って!」
ふん、と瑠姫先輩を見て言った景瑚。純喜に向いていた先輩の視線が、笑いながら景瑚に向いた。
「んな事しねーよ。今日はな。」
"今日はな"
瑠姫先輩は、わかりやすく私に好意を向けてくれる。それは嫌じゃないし、苦痛でもないけど、時々すごく申し訳ないと思ってしまう。向けられる好意に応えられないって、こんな気持ちなんだって。…純喜も、こんな気持ちになったのだろうか。
「瑠姫、まさかお前Aのこと…」
さっきまでふざけていた純喜が、驚いたように先輩を見る。そんな顔を見て、景瑚がキョトンとしながら首を傾げた。
「純喜くん知らなかったの?」
「知らないの純喜だけだよ」
「純喜も俺に大事なこと言わないから、俺も言わなかっただけー」
「俺だけ知らんの!?」
自分をめぐる会話であるだけに、どうしたら良いか分からず目が泳いでしまう。そんな私に気づいたのか、景瑚はいつものように私の肩に腕を回した。
「さ、行こ!かいさーん。」
瑠姫くんも早く行くよー、と、私を連れて歩く景瑚の横顔は、すごく逞しく見えた。
to be continued ...
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作者名:マツ子 | 作成日時:2022年10月1日 1時