React of the Queen. IV【あんスタ】

21 - 1 汀の嘘 ページ16

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「海だ〜☆

遠くが赤い！海が青…くはないけど！もう暗いし！
あははっ、靄だ！幻想的！海は別世界だなーの歌！〜〜♪…おわッ冷たッッ！？！？」



「あっこら靴脱ぐな！入るな！！当たり前でしょぉ！？」





夜が近づいた冬の海は、靄がかかっていた。

ほんのり残った赤が、靄をうっすらと色付けている。




「…冷た、寒ぅ」



「あら、ピンク色の貝！かわいいわぁ〜♪」





「…なんてまとまりのない…」





来て早々げっそりと頭を抱える隣で、彼女は笑っていた。


一瞬、『初めて見た』と思うほどの笑みだった。

普段の彼女の笑みとは、格段に違う。





「いいじゃん、楽しそうだよ、皆


司は遊んでこないの？」




「…、いえ、というか、私は見るだけのつもりだったのですが

leaderに至っては海に入るなどと…」





少し遠くで騒ぐ声が聞こえる。

レオを連れ戻すつもりで靴を脱いだ泉の罵声と、レオの歌声と笑い声。


それを、また少し離れたところから凛月と嵐が座って見ている。





「…、まあ、…本当はRequiemに勝ったら、という約束だったのですけれど


…あの終わり方では、私も納得がいきませんし」




「…嵐が勝ったけど王権限で、司が王になった


それが、納得いかないの？」




「いいえ


悲しい顔をしたままでは終われないと
そう、言いたいのです」






冷たい海からの風が肌を刺した。



Aは勿論、レオ、泉、嵐、凛月。

私だって、″悲しい″別れは望まない。




温かい家族なのだから。


ここが、安心できる″おうち″なのだから。





「……お姉さま


私達はみんな、お姉さまが抱える嘘を知ってしまいました」





海を眺めたまま、隣にいる彼女の表情を見ないようにして。





「…嘘？」





きっと今も貴女は、優しく微笑んでいる。


私の知る貴女は、いつもそう。





「貴女は私の知らないところで、世界を繰り返し、傷付いていた
私達に悲しみを悟られぬようにと、独りで


……愚かで、優しいお姉さま」



「…え」





静かな海。

騒がしい声が、いつの間にか消えていた。



皆が一言も発することなく、静かに波音をたてる海をただ眺めていた。






「…そんなお姉さまの悲しみを知らずに過ごして、笑っていた私は、もっと愚か


………紳士、騎士などと、…聞いて呆れる」






唯一こちらを向いたその顔は、小さく、悲しそうで優しい笑みを浮かべていた。






「…私は貴女を救いたい」








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