16 - 2 末子の我儘 ページ24
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他より大きな図書室の扉を開く。
そこにある姿に、小さくため息を吐いた。
「やっぱり、つむぎくん」
「ふふ、やっぱり分かってましたか
でも、夏目くんの要望でして
匿名で呼ばせていただきました、Aちゃん」
ふんわりと笑ったそれが、『そうそう』と机に置いてあった小さな菓子を差し出す。
それを手渡すや否や、一角の本棚の本を避け、そこにあった鍵穴に鍵を差し込んで。
「因みに、複雑なほど都合がいいらしいので
斑くんに頼んだのは宙くんです
ふふ、夏目くん、秘密主義ですよね」
本棚に隠れた入り口にAを案内し、
『つむぎ』は図書室の管理席のような所に戻った。
「ごゆっくりどうぞ〜♪」
軽く礼を言って、Aは階段を下りていく。
そこでまた出会った扉を開け、Aはまた、ため息を吐くのだった。
「…夏目
そこまで厳重に警戒して呼ぶ必要はないと思うけど…?
毎回驚くよ、零とか渉、それに奏汰は直接呼びに来るくらいなのに」
「毎回じゃないでショ、そレ
大体は電話とか手紙とか直接の方法は避けてるはずだヨ
奏汰にいさんは別としてネ
姉さんは危機感が少し無さすぎるんじゃないかナ」
背を向けたまま、夏目はフラスコを片手に何かを調合している。
その液体は美しい青だった。
「それで?
何の用、夏目
用が無きゃ、私のこと呼んだりしないでしょ?」
夏目は一段落ついたのか、そのフラスコを地面に置き、ゆっくりと振り向いて足元にあった雑誌をつまみ上げた。
「以前は過去にない大きなシナリオのズレに戸惑っていたようだけド
最近は頑張ってるようだネ、姉さん
証拠としテ、以前やってなかったことにも手をつけ始めタ」
「…、過去にないくらいシナリオがずれたのは
私が動いたのに同調して非演者が何人も”アドリブ”を重ねたからだよ
新しい、”凛月”って存在もあるし」
「そうだネ
にいさん達もそろそろこの流れを止めたいようだシ
当たり前の動きかもしれないけド」
「…、?
何が言いたいの?」
首をかしげたAに、夏目は圧し黙った。
急な沈黙に、Aは戸惑って。
「夏目?」
「今、後悔してることはないノ
姉さんにハ」
目線を僅かにそらして、黙って。
人形のように固まって
夏目はまっすぐにそう問うた。
つまみ上げた雑誌の表紙を眺めたまま
その問いに、色んな意味を密かに込めて。
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まひる(プロフ) - *ピンク*さん» ありがとうございます、嬉しいです(*´ω`)これからの物語も楽しんでいただけるようなものであれば幸いです〜(人*´∀`) (2019年10月17日 21時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
*ピンク*(プロフ) - いつも楽しく読んでます!!更新頑張ってください!!!!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
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