15 - 6 しじま ページ21
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カメラを向けられ、人形のようにぼうっと。
Aの目は、何処か遠くを見ていた。
そんなAを、泉と嵐は黙って見ている。
時折、ほんのすこし目をそらして。
「月永さん、Aちゃんの隣に入ってください!
その後は泉くんとAちゃんのツーショットです、泉くんは用意お願いしますー!」
「はい」
すっかり仕事モードの泉は、いつもと違う、緊張を肌に纏わせている。
Aの回りの空気と同じようで、少し違う雰囲気の。
「A」
Aの前に立つと、Aは黙っておれを見上げた。
少し目を細めて『喋ってないでやれ』とでも言うかのように。
それに背を押されるようにして、Aの顎にそっと手を触れる。
真っ白な頬。
その肌に一際目立つ赤いリップに赤いドレス。
普段は見ない、下ろしたストレートの髪。
おれが知ってるAじゃない
ふと、そう思った。
何枚も何枚も、フラッシュをたかれて
視線の先、瞳の位置、ポーズ、全てが計算されている。
精密機械のように。
ああ、なんて狭い世界なんだろうと。
そう、不意に思ってしまった。
「OKでーす!
次、泉くん!
よろしくお願いしまーす!
その次は嵐くんでーす!」
「宜しくお願いします」
「はーい」
カメラの先で、人形はただ、同じ形でずっと静止している。
時の流れが止まっているようにも思えた。
「お疲れ、王さま♪
どう?モデルやった気分は」
「息苦しい
疲れるっ」
「うふふ
王さまには向いてないみたいねェ」
けらけらと嵐は笑って、またカメラの向こうを見た。
まるで別世界を見るように。
「…、思い出したの
あの人、モデル”でしか”必要とされなかったの
モデル以外はてんでダメで、本当に苦労してて」
遠目で見て、嵐は急に小声で話し出す。
カメラの音に、自分の声を紛らすように。
時間が止まったような異世界を、哀れんでもいるように。
「…だからかしら
自分に、モデル以外にも必要とされる価値があることをわかってなかった」
「…ナル、」
少し俯いて、嵐は言った。
「その上、昔から一緒にいた癖して
あの人のこと全然知らないのよ、アタシも」
カメラの先の寸前で
最後に嵐はただ、恥ずかしそうに小さく微笑んだ。
「あの人達に言われなければ
それに気付くこともなかったんでしょうね」
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まひる(プロフ) - *ピンク*さん» ありがとうございます、嬉しいです(*´ω`)これからの物語も楽しんでいただけるようなものであれば幸いです〜(人*´∀`) (2019年10月17日 21時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
*ピンク*(プロフ) - いつも楽しく読んでます!!更新頑張ってください!!!!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
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