10 - 6 夜の太陽 ページ28
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「………なんて生意気なこと言っておきながら」
抱き抱えた少女を、誰もいなくなったスタジオの布団に下ろし、ため息を吐く。
音もなく寝ているAの頬に触れ、肩を落とした。
「……アタシは、何も出来てない」
そんな独り言が、木霊する。
その言葉が自棄に響いてきて、ゆっくりと体を起こした。
「……」
「きゃあっ、いたのォ…？凛月ちゃん……
……帰ったのかと思ってたわァ…」
『嫌ねェ』なんて慌てたように笑う嵐に、ぱたぱたとスマホの画面に指を滑らせ、突き出す。
「…ああ、ついさっき夏目ちゃんと会ったのよォ、珍しくね
ろくなこと話してないわよォ
強いて言うならAセンパイが寝ちゃったから預かってって」
時折試してみる発声も、微塵も効果はない。
結局忙しなくスマホをタップして、文字の羅列を相手に読ませるだけ。
声がないのは不便だ、いろいろと。
なのに一瞬でも、一度でも
声がなければいいと、望んでしまったから。
「まだ声、出ないのねェ」
スマホの手をピタリと止める。
ちらっと嵐の表情を伺うと、嵐はしゃがんでAの頭を撫でていた。
ただ、それだけ。
「凛月ちゃんにも事情があるんでしょうけどね
Aセンパイはアンタの声が好きなんだから
早く治してやんなさいよ」
人の親みたいな言い草。
文句のひとつも言いたくなったけれど、その背中にかける言葉は生憎見つからなかった。
くねくねして、オネェみたいだけど。
時々見せる表情や振る舞いは、紛れもない男だった。
「なぁに凛月ちゃん
アタシ、口パクで言葉がわかるほど器用じゃないのよォ？」
困った顔の嵐に構わず、スマホを放って言ってみる。
嵐は目を丸くさせてじっと黙ってそれを見ている。
その時だけ、何にも音がしなかった。
「…、
ねえ、やっぱりわかんない
何が言いたいの？大事なことなの？」
お姉ちゃんみたいに、嵐は何も言わない俺の頭を撫でた。
そうして、笑った。
「…アンタ、酷い顔してるわよ？
…センパイの事なんでしょ？
凛月ちゃんのその顔の理由」
年下の癖に
自分も酷い顔してる癖に。
「アタシはお姉ちゃんだから
アンタ達を守ってあげる
だから、そんな顔しないの、ね？」
『同じ顔してるよ』って、言ったって
嵐はただ、『何言ってるかわからないわよ』とやっぱり笑った。
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Story 11『 Masquerade smile 』→←10 - 5 ジレンマ
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まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…！！妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー！(*´ω｀)ありがとうございます(*’ｰ’*)ﾉ (2019年10月13日 11時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています！繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした！これからも頑張ってください！ (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…！そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
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