第七十幕『欠けた記憶の在処』 ページ41
.
次の日も、寝そべって、青い空を見上げて。
いつも変わらない景色を見る。
鳴った携帯を開けて、うざったい呼び出し音を消したと思えば
『凛月先輩』
授業中の筈なのに、可愛いKnightsの末っ子ちゃんは一体何をしているのやら。
「…何やってるのぉ、スーちゃん
良い度胸じゃん、『王さま』
授業を堂々とサボるなんてね」
『…今回ばかりは見逃していただけませんか
……鳴上先輩から仰せつかっていた調べ物についてのご報告を凛月先輩にと』
「…ナッちゃんからの調べ物、？
何で俺なの？」
うつ伏せになって、俺はその続きを促す。
電話先のスーちゃんは、少し暗い声で言った。
『…鳴上先輩のご指示です
…内容は、千歳Aさんに関して
彼女は私達と何かしらの繋がりがありました』
「それは、あんずに聞いたから何となく知ってたけど…」
『凛月先輩と彼女の関わりは、確かにpianoです
ですが、凛月先輩と彼女が繋がっていたものは、pianoだけではなかった』
手で玩んでいた栞が、ぴたりと止まる。
鞄の中のピアノの楽譜を思い返し、また思考を巡らせた。
『凛月先輩と彼女を繋いでいたのは、”夜”』
「は、？夜…？」
『夜の、音楽室
複数の目撃情報もありました
…夜の音楽室で、pianoを弾く音が聞こえていたと』
夜の音楽室で、ピアノ…、？
確かに、ピアノは弾いてる。
けど、俺の隣に誰かいた？
…少なくとも俺に、その記憶はない。
「言いたかったことはそれだけ…？
何が俺に必要だったのか、わかんないんだけど…？」
『…本当に思い出せませんか、凛月先輩
千歳A、…私達の、お姉さまの事を』
スーちゃんの言葉に、些か引っ掛かった。
”私達のお姉さま”？
「……スーちゃん、……何か思い出したの？」
『思い出したも何も、……全て
……後は瀬名先輩と、凛月先輩だけです
瀬名先輩は、お姉さまの所にいらっしゃいます
…思い出すのも時間の問題かと』
「……なに、それ」
手から栞がこぼれ落ちた。
少しだけ、それが土を被る。
「……その子は俺達の、一体何なわけ…？」
『…それは、凛月先輩次第です
夜の、音楽室
……きっとそこに、”彼女”はいます』
起き上がって、俺はカーテンのかかった教室を見上げる。
そこに引き寄せられるようにして
俺は日光の下をゆらゆらと歩き始めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 240人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まひる(プロフ) - 朔さん» 長かったのに最後までありがとうございました(/´△`＼)そう言っていただけると本当に嬉しいです！新作も是非読んでいただければと思います(*’ｰ’*)ﾉありがとうございました(人*´∀｀) (2019年8月1日 21時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 最終章までお疲れさまでした。最初から最後まで楽しく読ませてもらいました。内容もしっかりしてて読んでて凄く楽しかったです！新作、楽しみに待っています！ (2019年8月1日 19時) (レス) id: ba31d19644 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
