# Take 68 ページ21
テーブルの上に置かれた、スポーツドリンク。
普段はカロリー高いから水にしろ、なんて偉そうなこと言っておいて
こういうときばっかり、人に寄越す。
でも、風邪のときは水よりもスポーツドリンクが良いってこと
先輩は知っていて、敢えてそうしてる。
「……ちゃんと冷たいし、」
ペットボトルの表面に浮き出た水が滴り落ちて
机にまんまるく透明で、宝石のようにきらっと輝くそれが、触れなくともペットボトルの冷たさを示す。
その横に、濡れないようにか小さいビニルに覆われて丁寧に包装された紙が置いてあった。
開いて覗けば、そこにはおたまじゃくし。
五線譜にのった可愛い音符の上に綴られる、文字のひとつひとつさえ酷く美しく綺麗だった。
「…曲の歌詞付け、?
…………それならお兄ちゃんに、」
見たこともない、紙の上で奏でられる曲。
お兄ちゃんが描くにしては、大人しく
滑らか、というのが正しいような曲であった。
そして歌詞も、Knightsの曲とはうってかわった物で
その曲には合わないものだった。
「………、?」
その紙と一緒に入っていたもう一枚の紙。
それはきっと、先輩がお兄ちゃんに渡しておいて欲しいと私に頼んだであろう
それこそKnightsの、お兄ちゃんの曲らしいものの楽譜。
それとまとめてビニルに入れてあったのだから
この小さな紙もお兄ちゃんに渡せと言うことなのだろうか。
「……、不思議な曲、」
騎士とは言いがたい、よく分からない変わった曲。
「あれ、A起きてたのか?
寝てろよ、一応風邪なんだから、な?
……って、それ何?楽譜?」
ひょっこり覗かせたお兄ちゃんに、私は慌ててビニルに楽譜を仕舞って差し出す。
それからすぐ、お兄ちゃんはそれを確認し、一枚紙を取り出して、ビニルを何故か私に突き返してきた。
「?」
「ん?…これ、Aのだろ?」
「…え?」
差し出されたのは、最初に見た謎の曲。
お兄ちゃんは平然とした顔で私に言った。
「それ、おれの曲じゃないぞ
多分、セナの
間違えたのかな?今度返してやれよー、
…あ、そうだ、ついでにそれ返す時にセナ連れ出してやって
セナ、最近仕事詰めで疲れてるみたいだしさ」
もやもやと、すっきりしない気持ちの中
私は、何となく頷いた。
.
『一枚の楽譜となりゆきの約束』
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まひる(プロフ) - L:eta-starさん» ありがとうございます…!最近更新が遅めなのですが…それでも楽しんでいただけているようで何よりです!これからも精進します…!σ(*´`*) (2018年3月17日 9時) (レス) id: 203be79402 (このIDを非表示/違反報告)
L:eta-star - はじめまして、とても素敵です!お兄ちゃんしてるレオかっこいいです。瀬名もかっこよくて,,,,応援してます! (2018年3月16日 23時) (レス) id: e6de48871a (このIDを非表示/違反報告)
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