1 - 4 蜉蝣 ページ5
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体育は自習だった。
だから、見学。
座っていると、男子が突っ込んできた。
それをひょいと避ける。
「危ないよ、千秋くん」
「すまん！つい夢中になってな…！
怪我はないか！？」
ドリブルをしながら、『千秋』は笑う。
差しのべてきた手に軽く触れて、立ち上がった。
「大丈夫だよ
気を付けてね」
男子が熱中するのはバスケ。
バスケ部千秋の打倒に盛り上がっている。
立ち上がり、ゆっくり歩き出すと、後ろから手をとられる。
知っているから、驚かないし振り返らない。
「薫くん
体育、出てたんだね」
「わあ、凄い、アタリ
勿論、Aちゃんが出るからね
何かしないの？Aちゃん、運動神経良かったよね？」
「多分薫くんとおんなじ理由だよ
そうだ、次プロデュース出てよ、私行くから
困るんだよ？薫くんいないと
ご褒美にデートならしてあげるから」
「ほんとっ？
じゃあ次行く、楽しみにしてるから
ドタキャンしないでよ？」
ひらりと手を振り、『薫』は離れていく。
それを見て、不機嫌そうな顔が目の前に現れた。
「休憩？お疲れ
千秋くんの味方してあげてたね
意外、友達の味方するタイプだったんだ？」
くすと笑うと、泉は怒って汗を拭きながら文句言い出す。
始まったら長い。
「…あんなやつほっとけば？
てか違うし
あいつ、俺にパスするんだもん
クラスのやつが俺をちあくんの味方だと勘違いしてさあ、なんなのぉ！？」
「薫くん？私は別に良いんだけど
水ちゃんと飲んでよ、春でも気は抜けないから」
「はいはい
A見てばっかりじゃん、少しはやったら？」
ペットボトルを傾ける泉に、苦笑いで頭を傾けた。
「はは
この熱気には混ざれないよ」
「……あぁ
…納得」
ペットボトル片手に千秋達を眺め、泉はため息を吐き目をそらした。
ぎゃーぎゃーと騒ぐ男子の中で、ひょいひょいとボールを操る千秋が笑っている。
「…、」
「…、A、ダンス見てよ」
「…ん？此処で？」
「体育だし、良いでしょ」
タオルを傍に置いて、泉が僅かに笑う。
「暇でしょ？
手伝ってよ、お願い」
その笑顔は、いつも通りに見えて陰っている。
何処か、思い詰めている。
「…、うん
いいよ」
──傍にいてあげなければ、壊れてしまう
この子の、思い詰めてしまった先を知っている。
これから起こることも、全部。
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