5 - 2 精神美 ページ31
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「千秋くん
どういうこと？」
入れ替わって、今度は後輩達が遠くで奏汰を引っ張り出そうとしている。
若干名、諦めている者もいるが。
それを背に歩いて来た千秋は、首を傾げた。
「何の事だ？」
「泉に私を連れ出してって頼まれてたって」
千秋は、『ああ』と笑ってすぐ、隠そうともせず頷いた。
「確かに、頼まれていたぞ
あの時はレッスン中でな、隊員達が聞いていたんだ
Aが高峯を連れ出そうとしてくれていたのを見て、丁度良いからと奏汰が気を利かせてくれたんだと思う」
「翠くんが妙に素直だったのも…」
「高峯にはAに沢山恩があるからな、そういうことかもしれん
まあ、俺にはわからんがな…☆」
ふはは、と笑った千秋が
隣に腰を下ろし、こちらをまっすぐ見た。
「何に悩んでいるかはわからんが
困っているのなら声をかけてほしい、助けを求めてほしい
俺は、困っている人の味方、ヒーローだからな☆」
泉が、”海が好きだから”と千秋に言った理由。
特別海が好きってわけじゃない。
Knightsの皆と行ったことがあるのも、全員とで1回
泉、レオとそれぞれ一回の、合計3回だけ。
でも、海が嫌いな訳じゃない。
海を見て、砂浜に楽譜を書き殴っていく元気な姿も
静かに音楽を聴いて、語り合って、ただ海を眺めている横顔も
それぞれ好きな事をしている彼等をただ見ていることが、
凄く好きだった。
だからと言って、海を少しも見ていないとか
千秋達と見る海が好きじゃないって言うんでもないけど
──ぼくたちは、
─…こまっているひとのみかたのようですから
「…千秋くんだから、泉は頼んだのかな」
彼の傍は、暖かい。
陽射しが海に反射し、きらきらと光っている。
「さあ、どうだろうな？
だとしたら、俺は瀬名に頼られているんだろうか？
そうだったなら、何だか嬉しいな…☆」
陽に照らされて、明るい笑顔は更に明るく見えた。
海の上で、奏汰は笑う。
彼の居場所はここ。
でも、自分の居場所はここじゃ
「嫌なことは嫌だと、好きなことは好きだと言って欲しい
AにとってのKnightsがそうであるように
俺だけでも、困ったときにはAの”それ”になろう」
意表を突かれた。
千秋は尚、笑っていた。
「約束だ！
いつでも俺はAの
太陽のように、暖かく。
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