3 - 2 雷鳴 ページ17
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「A先輩っ…！」
荒い息が、背後にある。
今この瞬間、『シナリオ』に1節増えた。
「……、なぁに、真くん
おめでとう、初戦突破
…なんて、皮肉みたいだね、ごめん」
「いっ、…いえ…」
Trickstarには少女がいる。
だから、あまりこちらから積極的に関わることは少ない。
もじもじと、何かを言いたそうに口を開いては、閉じる。
ぱくぱくと繰り返し、結局何も言えずにいる真に
少し笑って声をかけてみた。
「どうしたの？
…何か、言いたいんじゃないの？」
さっきまでステージで歌っていた
かつての紅月戦でステージ上にいた
そんな彼とは対照的なくらいの今の彼。
漸く口を開いたかと思えば一言。
「…あっ、…ありがとうございました…！」
きょとん、として、ついつい言う。
「…負けてくれて？」
「ちっ、違います…！！」
「はは、冗談だって」
面白い子だ、と改めて思ったりもする。
眼鏡の奥を覗いて、泉が気に入るわけだと、その瞳を眺めて。
「…A先輩が鍵を開けてくれたって、明星くんに聞きました」
「…、…あれくらいどうってことないよ
………いくら愛し子だからって、自分達が堕ちるのをただ見てることはしない」
「…いとし、ご…？」
「……君達は今、波に乗ってる
これからきっと、大きなことを成し遂げられる
…でも、どんなときでも、
回りの人がいてくれる有り難み、忘れない方がいいよ
……今一番、わかってるんだろうけど」
ぱたぱたと、真の後ろを走ってくる彼らを見つけて、
ふいと方向を変えた。
余計なことを、言ってはいけない。
「がんばってね、Trickstar
…またきっと、関わることがあるだろうから
それまで、潰れないでね」
「…えっ、……はいっ、」
KnightsとTrickstarはいずれぶつかる。
その時まで、『シナリオ』を進めないと
「A」
『ゆうくん』とやらを見て、珍しく見向きもせず
ただ一直線に目を合わせて。
「…泉
どうし…」
「来て」
「えっ」
「いいから」
手が引かれるがまま、ぱたぱたと、その場を後にする。
その時の泉の様子は、何から何までおかしかった。
「…泉…！
何、なんでこんなところに…」
「…ライブ終わったからに決まってんでしょ」
暫くして相対したその瞳は
酷く、揺れていた。
「…泉、…？」
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