17.一触即発。 ページ17
「この男は誰なんですか？」
私を睨んだまま、二宮が問う。
でも私の返事を1秒も待つこと無く、また彼は雅紀を見た。そして、ニッコリと笑った。
「はじめまして。榊社長の秘書をしております、二宮です」
雅紀が「秘書...」と呟く。
その声があまりにも弱々しくて思わず、雅紀の腕を掴んで「大丈夫だから」と声をかけてしまった。
「二宮、どうしてこんな所に居るの」
「社長の様子がおかしかったから、失礼ながら尾行させて頂きました」
「は...？尾行って、は？」
「は？オレはお前の見張りもするように言われてんだよ、会長から」
「仕事だわ」と吐き捨てるように言って、二宮はまた「で、誰なんだよ。その男は」と眉間に皺。
「...前に助けて貰った事があって」
嘘じゃない。自転車のチェーンを直して貰った。
助けて貰った。
「そしたら今度は彼が困ってたから、お返しに助けてあげてるだけ」
「困ってる？」
「立ち退きで家を追い出されて、仕事も辞めなきゃいけなくなって...」
雅紀は何も言わずに、唇を噛んで俯いてる。
「それで？助けてるとは？」
「.....」
「何よ」
「...仕事が見つかるまで、うちに置いてあげてる」
「はぁ？」
予想はしてたけど、二宮は「アホなのか？」と掌で私の頭のテッペンをガシッと押さえた。痛い。
「あっ、あっ、秘書さん！僕、やっぱ出て行くから！」
そんな私達を見てた雅紀は、私の頭の上にある二宮の手を引っ張って「だから、やめたげて」と訴える。
二宮は掴まれて皺になったジャケットの袖をパンパンと払いながら、雅紀を一瞥。
「ごめんね、Aちゃん。1日だけでもホンットに助かった！ありがとね」
「待って、雅紀。良いから」
「でも...」
私は二宮に「これは、私のプライベートなんだから口挟まないで」とキッパリ言った。
二宮はあからさまに嫌な顔をしたけど、その場ではもう何を言う事も無く帰って行った。
その後は、泣きそうな顔をしてる雅紀を連れて予定通りに買い物。
色々と選んでる内に雅紀も笑うようになって、私もたくさん笑った。
「お前、自棄にでもなってんの？」
二宮がそんな事を言ってきたのは、翌日の社長室でだった。
「...何それ」
「完全なる失恋でついに頭壊れた？」
二宮には私が智くんを好きな事はバレていた。
そして、つい数日前に智くんは彼女と同棲を始めていた。
・
思えば。
確かに雅紀と暮らし始めたあの頃の私は、本当に自棄だったのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
米(ヨネ)(プロフ) - ずっと読みたかった『アディクトインダストリー』やっと読める日が来た事に感動(T^T)同じ人のお話を並行して読むには頭が追いつかないようで(笑)他の相葉さん読んでる最中に登場したレイさんの相葉さん。ずっと保温させていただいてました。満を持して！お邪魔します^^ (2019年3月29日 4時) (
レス) id: c17294886d (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 明けましておめでとうございます。櫻井社長が何か仕掛けてくるのか、こないのか。気になる。３月まで忙しくてリアタイで読めないの(泣)だから変なタイミングでコメントする事をお許し下さい(笑) (2019年1月2日 9時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - みっちゃんさん» 楽しんで頂けててよかったですー(*´ω｀*)cube、私も好きな映画だったのでお話に出したいなぁと思って(*´ω｀*)新章も楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - なおさん» 何か、例えばニノちゃんのお話だと物凄く反応を頂けるんですけど今回はあまり楽しんで頂けてる雰囲気を感じられなかったんですよー(^◇^;)でもお声掛けして頂けて良かったです！最後まで頑張ります(*´ω｀*) (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - こっしーさん» こんにちは！私もこんなワンコが家にいてくれたら、本当になんでも頑張れるしすぐ家に帰りますー(*´ω｀*)続きも楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年12月5日 0時
