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Medical Halloween【九条貴利矢】 ページ48

※ハロウィン企画第六弾


「ちぇー、折角自分も零子ちゃんの女医さん姿見れると思ったのに」
「白衣姿なら毎日見てんだろ」
「違うんだってー。自分は男達の考えるあの頭の悪そうな妄想の中の女医さんみたいな姿が見たかったの」
「じゃあ、このナースのコスプレは捨てていいな?」
「すんませんでした」

 扉の向こうから聞こえてきた奴の謝罪の言葉に、思わず口角が上がる。なんだかんだ言いつつハロウィンに貴利矢の望むコスプレをしてやるだなんて、あたしもとうとう焼きが回ったか。

 小児科の子供達には魔女の格好でプレゼントを配り歩いて来た。普段なかなか触れ合うことが出来ない彼らも(零子の顔を見ると泣きだしてしまうので立ち入り禁止になっている)、今日に限ってはあたしに対して純真無垢な笑顔を見せてくれたし。きっと自分でも計れないほど今は上機嫌なのかもしれない。だからわざわざ仕事終わりで疲れきっているにも関わらず、この変態的なナース服に袖をことにしたのだ。多分。別に貴利矢の喜ぶ顔を見たいからとかではない。断じて違う。普通のナース服ではあり得ない真っ黒なナース服を身に纏い、黒のナースキャップを被り姿見で確認する。一応ちゃんと着れてはいるようだ。

 貴利矢からのうるさい催促の声に耳を塞ぎつつ扉を開ければ。奴はあたしの姿を見て静止した。

「なんだよ。黙ってないでなんか言え」

あたしの言葉にぱくぱくと口を開ける貴利矢。言葉、いや声にさえなっていない。しかしすぐに奴は「やべぇ……」と小さく呟くと。すぐにあたしの顔を見て言い放った。

「予想以上の破壊力」
「あたしは破壊神か」
「やっぱ黒にしてよかった……。零子の銀髪には絶対黒が良いと思ったんだよ……。薄いタイツもやばいし最高なんだけど」
「御託はいいから」
「え、何?」
「何って……。コスプレしたらやることは一つじゃねぇの?」
「撮影会?」
「ちがーう」

スマートフォンをポケットから出す奴の手を制し、そのまま腕に自身の体をぴったりとくっつける。恥ずかしいのは恥ずかしいが……。もうこうなればヤケだ。

「わかるだろ?」

あたしの突然の行動にかなり驚いていたようだが、貴利矢はあたしの言いたいことを漸く察すると、少し目を泳がせつつもニヤリとほくそ笑む。あたしから誘う形になってしまったのは悔しいが仕方ない。これはこんな時にばかり鈍い貴利矢が悪いのだ。

「零子のえっち」

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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時

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