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ソウゴとツクヨミが唖然と辺りを見回していると、ゲイツは酔いつぶれ訳がわからなくなっている客らを見て「下らん」と呟く。と、その時。カウンターの辺りに出来た人の壁から、女性客達の歓声が聞こえ。三人は何事かと立ち上がった。続いて「透子さーん!」と口々に叫ぶ彼女らの声で何が起きたのかを理解する。透子が戻ってきたのだろう。
「凄い人気だな」
ソウゴがそう呟くと。近くにいた女性客が彼らに話しかけた。
「知らないの?店で一番人気なんだよ透子さんって。劇場でもイケメン芸人って言われてる男性有名芸人と並ぶぐらい出待ちも多いし」
「へぇ……」
「ネタも実力派だし、あの中性的で美少年みたいなルックスでしょ?女子がほっとくわけ無いんだわコレが」
話していると、人混みを掻き分け店の中央へと出てきた透子がソウゴ達の姿を見つけ「おおーソウゴくん!」と手を振る。彼女はいつもの柄シャツと似た臙脂色のチャイナドレスを身に纏っており、深いスリットの隙間から長く艶めかしい脚を覗かせながら彼らに近寄って行った。
「来てくれてあんがと。ドリンクは頼んだ?」
「うん。透子、忙しいみたいだけど大丈夫なの?」
「今日シフト入ってなかった奴が急遽助っ人に来てくれてさ。今ドリ場を代わってもらったとこ」
「お疲れ様」
「ありがとーツクヨミちゅわーん!なにそれ猫耳?超可愛いじゃん!服装がいつもと一緒なのが残念だけど。でもいつも可愛いから問題無いか!」
「ツクヨミを口説くな」
「なになに、拗ねてんの?ゲイツくん。ゲイツくんも可愛いよ〜」
そっぽを向くゲイツの両頬を両手で掴み強引に顔を自分の方に向かせ、ぐりぐりと撫でる。当然彼は嫌がって身を捩ったが、手を振り払わない辺りそこまで嫌ではないようだ。
「俺のも見てよ!」
「ソウゴくんのもいいね、超似合うよ!やっぱ王様のコスプレはしなかったわけ?」
「それさっき関西弁の人に言われた」
「あはは、皆考えることは一緒ってことだね。でも、似合ってるよ」
「あぁ、透子も……」
似合ってるよ、と言おうと隣に座った彼女の全身を一瞥し言葉を詰まらせるソウゴ。彼女が女性らしい格好をしていることを改めて認識し。その姿が思っていた以上に婀娜めいている為、彼は用意していた言葉も忘れただただ透子に見惚れてしまった。
「ソウゴくーん?」
覗き込む彼女の顔が間近に迫り狼狽える。
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時