充実の日曜【氷室幻徳】 ページ38
※ハロウィン企画第三弾
折角の日曜日でしかもオフだというのに、朝っぱらから季実子に呼び出された俺は。開店してすぐの忙しいnascitaを尻目に二階の部屋へと上がった。季実子もどうやらオフらしく、マスターの仕事が一段落つくまで待っているつもりらしい。一つの階につき一部屋という設計のビル故、階段を上がってすぐに彼女の待つ部屋の扉が姿を現す。備え付けられたインターホンを押せば、季実子はすぐに出てきてくれた。
「おはようございます、幻さん！」
「あ、あぁ……」
眩しいばかりの笑顔で俺を迎える季実子。勝手知ったるように鍵を閉め、俺を部屋に通した彼女は。「コーヒー淹れますね」とキッチンへと向かった。恐らくマスターが作ったコーヒーを温め直すだけだからそんなに時間はかからないだろう。さて──。
俺は何故彼女に呼ばれたのだろうか。
「季実子、しかし何故俺をこんな朝から呼んだんだ？」
「え？あ、すみませんちょっと聞こえなかったので待っててください」
俺の問いかけは聞こえなかったらしい。大人しく待つことにする。しかし、待てど暮せど彼女は戻ってこず。若干心配になった俺は立ち上がり、キッチンへと向かおうとした。しかし、キッチンに入る前に季実子が漸く姿を現しその必要は無くなるのだが。
「一体何をしていた──ッ！？」
出てきた彼女の姿を見て、言葉を失った。
「お待たせしました！どうです？これ」
そう言って季実子は、昔から定番となっている白いフリルエプロンの裾を摘んで少し上げる。それより特筆すべきは、エプロンから伸びている四肢が素手素足で、どう見ても下に服を着ている様には見えないことだ。まさか、まさかとは思うが。これはもしや俗に言う裸エプロンとか言うやつなのでは……！顔を強張らせて黙っていると。彼女は「フフン」と得意げに笑い、後ろを向いた。
「裸だと思いました？なら成功ですね！」
なんてことない、ホットパンツに丈の短いキャミソールだったらしい。安心とがっかりの相反した感情を吐き出し。俺は季実子に小さくデコピンをしてやった。本当に心臓に悪い。
「それで、これをマスターでなく俺に見せて何がしたかったんだ？」
「サプライズしたいんです。惣一さんの好きそうな衣装でハロウィンパーティに登場してあっと言わせたくって」
「ハロウィンパーティ？」
「あ」
季実子は「やばい」と書いたような顔をして目を泳がせる。
「呼ばれていないんだが？」
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2019年9月25日 10時
