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lucky halloween【花家大我】 ページ35

※ハロウィン企画第二弾

 すっかり秋めいてきた外を歩くと頻繁に目に入るものがある。それはハロウィングッズだ。ここ十年くらいの間に急激に人気になったハロウィンという、本来日本人には無縁のイベントが今や定着しかかっていのは誰でも知っていることだろう。そしてもっと無縁であろう花家医院でも、その波は確実にやってきていた。

 机には大量のハロウィングッズが置かれており、ペン立ての中の文具も全てハロウィン仕様になっている。恐らく全てニコがやっているのだろう。コウモリの飾りが付いたボールペンをノックすれば、羽の部分が指に刺さって地味に痛い。馬鹿なイベントにここまで被れてしまうだなんて。大我は大きく息を吐き、パソコンへと向かった。

「よう、大我。暇か?暇だな」
「勝手に決めるな。俺は忙しいんだ。用ならさっさと言え──零子」

突如として登場した零子に顔を顰めつつ、パソコンに向かったままそう問う。数ヶ月前に祭りに誘われたと思ったら当て馬にされていたということがあった為、それを未だ根に持っているようだ。

「ここに匿って欲しい」
「匿って欲しいって……。どういうことだ?」

何故か彼女は長いコートを身に纏っており、室内だというのにそれを脱ごうとはしなかった。涼しくはなってきたものの、コートを着るにはまだ暑い。明らかに怪しい格好をした零子を胡乱げに見つめ次の言葉を待つ。彼女は少し目を泳がせた後診察台に座ると、深く息を吐いて言った。

「着せ替え人形にさせられてんだ……」
「着せ替え人形?」
「あぁ……。ハロウィンの日に小児科でハロウィンイベントするから、雑務のバイト達でコスプレして子供にプレゼントを配ることになって……。それで、衣装を決めるから試着しろってキャットウーマンだとかセクシーポリスだとか色々と……。くそっ、あんなの恥の拷問だ!」

事情を聞いて、大我は漸く彼女が何故長いコートを着ているのかを察した。恐らく、あのコートを下はその着せられたコスプレとやらなのだろう。

「その下は無理矢理着せられたコスプレか?」
「……そうだよ、言っておくが見せねぇからな」
「だろうな。まぁ、仕事の邪魔さえしなければ何処に居てもいい。ただ騒ぐなよ」
「分かってるよ。恩に着る」

零子はそれだけ言って診察室を出た。幸い患者も少なく、入院患者の部屋も殆んど空いている為。適当な部屋を見繕って入る。

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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時

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