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「妄想上のわたしじゃなくて現実の私を見て!死にかけてるのいだだだだだだだだ!!」
「季実子!?」
「季実子ちゃん!?何やってんだよ万丈、おいコラ離せって!」
戦兎と惣一の二人がかりで万丈を引き剥がし。漸くキャメルクラッチから開放された季実子は「背骨折れるかと思った……」と、息を整えている。
「おい万丈、元はといえばお前が軽口叩くのが悪いんだろ。なんで女の子にキャメルクラッチを食らわすんだよ」
「季実子ちゃんになんか言うことあるだろ」
「めちゃくちゃスッキリした」
「コイツッ……!」
美空によしよしと慰められる季実子は、どうしたって美空の母親には見られないだろう。どちらかといえば美空の方が母親に見えるぐらいだ。
「でもさ、本当に肌とか出すCMだったりして季実子の体が傷ついてたら、CMの話がおじゃんになるかもしんないんだからね。その辺万丈はしっかりと反省して」
「あー悪かった悪かった」
悪びれもなくそう言う万丈に、季実子は肩を竦めたが。取り敢えずキャメルクラッチの件は流してまたソファへと座る。
「それで、戦兎さん達はどんな予想を立ててたんですか?」
「長いから割愛して話すと。ミニスカサンタの独身ロリ人妻で、撮影に使った振り袖は買い取るって話」
「は?」
美空、季実子、万丈。三人シンクロして惣一と戦兎に対し首を傾げる。
そこへ幻徳と一海がやって来ると。二人は季実子にCMが決まったという話を聞いて大層驚いていた。そして、先程まで皆がしていたように二人で「どんなCMか」を話し合い始める。
「急遽みーたんにもCMの話が来たりしないかな」
「来るわけ無いでしょ。わたしは一般人なんだから」
「でも美空ちゃんぐらい可愛いとスカウトされちゃうかも!」
「やーん季実子大好きー!」
「俺と季実子殆ど同じこと言ってるのに扱いが全然違う……」
「猿渡。季実子の言葉が喜ばれたのは"美空が一般人でも、スカウトが見たらきっとスカウトされるだろう"と現実的に筋道を立てて言った言葉だからだ。お前の場合は……。美空の話をしてる時の顔が気持ち悪い」
「現実的とか筋道の話はどこに行った?」
一海と幻徳のことは置いておいて。話は季実子のCMに戻る。
「何か他に情報は無かったのか?他に聞こえたワードとか」
「うーん、なんというか……。鞄がどどうのって言ってた気がします」
「それを早く言ってよ!ファッション関係のCMじゃない?」
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時