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戦兎の言葉に一同「なるほど」と頷く。
「クリスマスといえば、例のチキン屋さん?」
「それもそれでまた良いですねぇ……。有名なお店のCMですし、わたしの知名度もうなぎ登り!」
「でも季実子ちゃんにはあんまりチキンにかぶりつくみたいな印象無いなぁ」
「そうか?さっき俺に食ってかかってきたみたいにすればぴったりだろ」
「万丈さんは少し口を閉じていてください」
また睨み合う二人。しかし、喧嘩が始まる前に万丈を戦兎が、季実子を美空が羽交い締めにして宥める。しかし「クリスマスのCMなら、ミニスカサンタとか有り得るかな」という惣一の言葉により戦兎が食いつき、万丈を放してしまう。
「もしそうだったら俺は録画してる番組のCMを飛ばさずに毎回見る羽目になる」
「戦兎……。俺もだ」
などと言っている二人のよそで、季実子は万丈に頬を思い切りつねられていた。
「ひほらひゃん!はふへへ〜!(美空ちゃん!助けて〜!)」
「もう万丈やめてってば!顔に跡がつくじゃん、本当に化粧品のCMだったらどうすんの!?」
「知るか!俺はこいつを痛めつけないと気が済まねぇ……」
乱闘寸前の中、戦兎と惣一は呑気に季実子のCM配役談議に花を咲かせている。すぐそばで彼女が痛めつけられていることには気づいていないようだ。
「クリスマスならトナカイガールも有りだ!」
「季実子ちゃんの母性をもってすれば、サンタを楽しみに待つ子供のお母さん役もありえるんじゃ……?」
「何それ最高かよマスター。独身にしてロリ人妻とかどんだけ設定盛り盛りなんだよありがとう」
「独身にしてロリ人妻なミニスカサンタ……?」
「もうこれわかんねぇな」
「変態話してないで助けてくださいよそこの変態二人組!」
万丈と取っ組み合う季実子の悲痛な叫びが室内に響く。もはやこの部屋の中はプロレス会場である。とは言っても、肉体的な攻防となれば万丈の一方的な私刑でしかない。キャメルクラッチされる季実子は床を叩き「ギブギブギブ!」と音を上げる。美空に万丈を引き剥がそうとするが、女の力ではそれは敵わなかった。
「待てよ……?12月といえばクリスマスとばかり思って考えてたけど、大晦日や新年向けのCMって可能性はどうだ?振り袖姿とかあるかも」
「はぁ……?何だよ天才かマスター……!是非使った振り袖は買い取ってもらってここで着てもらおう」
「そうだな……。俺と戦兎の貯金を合わせれば撮影用の振り袖ぐらい……」
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時