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「それで、刃さんに思わずキスをしてしまう、なんてことがあるでしょうか?」
「あるわけが無いだろう。さっぱり意味がわからん」
「わたしもそう思います」
だが、彼女の聞きたいことはわかる。福添からキスをされたから彼のその真意がなんなのかを、福添と同性である俺に聞きたかったのだろう。というか……奴からキスをしたのか。思わず小さなため息が出て、それを聞いたらしいリコが首を傾げる。
「まぁ、少なくともただの同僚や部下だと思っている相手にそういうことはしないな」
尤も──あの副社長はリコのことを好きだからそうしたのだろうが。それを教えてやるほど俺は優しくない。それに、今彼女を送ってやっているのは俺だというのに、他の男の話を出されるのがあまり面白くないというのも少しある。正直、キスがどうだとかそんなことはどうでもいい。
彼女の住むマンションに着くと、彼女は立ち止まり深々と頭を下げた。
「あの、ありがとうございました。諫さんもお気をつけて」
「……あぁ」
妙だ。このまま帰すのが惜しいと思ってしまうだなんてどうかしている。ずっと仕事漬けだったからか、頭が沸いているのかもしれない。
だから、今からすることも頭がおかしくなったせいだ。
「諫さ……!?」
一歩彼女に近づき、彼女の頬に手を添えキスを落とす。そして、彼女が正気を取り戻す前に背を向け。俺は振り返ることなく帰路についた。かっこつけたわけではない。ただ単に、彼女の顔を見る勇気が無かっただけだ。
あとがき
今日のゼロワン、福添さんの出番無くてほんま無理やねんけど……(2019/10/6)
夢主の不破さんの呼び方間違えたので書き直しました(2019/10/8)
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年9月25日 10時